さよなら、サヨナラ……大切な人

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 相原との、遠い先の見えない付き合いを始めた花は、自分たちの
付き合いが……というより、相原の本意がどこにあるのか、もう
少し鮮明になった時、自分がどこに向かって進めばいいのか
考えればいいと思っていたのだ。



 自分が非常に曖昧な|場所《ところ》にいることは
百も承知している。



 相馬が当初の主張を覆してきた時も困惑したものだが、
今回のことはどう考えてもあり得ない話で本当に困ったことに
なった。


 周囲のお祭り騒ぎも沈静化した頃、花は相馬の袖を
引っ張ってブースへ誘った。




「どういことなの? どうしてこんなことになってるの?
 ちゃんと説明して下さい」


 相馬が石田ひまりの話を始めると花は口を挟まず静かに
最後まで聞いていた。


 そして言った。



「そこのところだけを聞けば、相馬さんの気持ちも分からなくも
ないし、私だとも発信してないから責めることができないのは
分かりました」



「そう言ってもらえて助かったー」



 そう安堵の気持ちを吐露する相馬には間違った噂が流れている
というのに危機感が皆無に見える。


 これから私がどんな風に返事をするか知っていたとしても
同じ態度でいられるだろうか。




「この話をこんな|ところ《社内》で訊くのもなんなんだけど、
ちょうど良い機会だから返事を聞かせてもらえないだろうか」



「私、相馬さんの異動がこんなに早く決まるなんて
思ってもみなくて。
 おかしくないですか?

 私を相馬さんに付けておいて1年もしないうちに仕事の先輩で
ある相馬さんを異動にするなんて。

 会社は何を考えているのだろうって思ってしまいます」



『絶対おじいちゃんに言いつけてやる』と、
そこまで考えていたのに、
相馬が思ってもみなかったことを言い出した。




「会社側からの意向じゃなくて、俺が12月に異動を
願い出たんだ。
 掛居さんの返事を聞いたすぐ後だったかな。
 駄目元で。

 そしたらすんなり通っちゃってさぁ、俺が一番驚いてる」





「相馬さんが……」

 花は絶句するしかなかった。




 私は相馬さんとは仕事の相性が良くて、ここでしばらく
頑張りたくて、どちらかが異動になったらその時に交際申し込みの
返事を考えてみるって答えた。




 この人は私の気持ちが全然分かってなかったのだ。






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