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さよなら、サヨナラ……大切な人

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「相馬さん、付き合ってる人いらっしゃるんですか?」

 あまりに突然で露骨に直球を投げられ、相馬は目が点に
なった。




『いきなりすごい質問だなぁ~』




 質問してきた女子社員の横にいる|女子《こ》は対照的に俯いて
スプーンを動かしていて心なしか、耳が赤く染まって見える。



 自分の返事を知りたがっているのがその彼女か、はたまた
質問してきている彼女か、どちらかは分からないが、
どちらにしても今自分が想い人以外他の誰とも付き合う気が
ないということは、ちゃんと意思表示しておいたほうが
いいだろう、そう相馬は判断した。





 本当のところは付き合うなんて決まってはいないのだが、
過去気のない女性に執拗に付きまとわれて困った経験からここは
決まっていることにして話すことにした。


 そしてこの数時間後のこと。




 相馬から自分が振られたわけでもないのに質問した石田は
自販機の前で一緒にいた同僚に声を潜めるでなし、誰かが
近くを通れば聞こえてしまうかもしれないくらいの普通の
話し声で相馬の話をしていた。




「今日、相馬さんに彼女がいるかどうか聞けたのよ~」



「やったぁ~。すごいじゃん。……で?」



「それがさぁ、ちょっと変わった返事だったのよね」



「どんな?」



「『今は付き合ってないけど、もう少し先で付き合うことに
なってる人がいる』って言ったの」




「どういうことなんだろ?
 もしかして石田さん、牽制されたとか!」



「そうなのかな、やっぱり。
 でもそれなら普通に付き合ってる人がいるって言えば
済むことなんじゃない?」


「それもそうよね」




「あ、そうそう忘れてた。
 確かね『自分が異動になったら付き合うことになってる』
って言ってたな」


「あっ、閃いた」



「なになに」




「異動になったら付き合うって、アレじゃないの。
 相手、掛居さん」


「あー、そうよね……そうかも」


「あー、こりゃあ失恋決定だわ。かわいそうに」




 さっきから話をしている女子社員は失恋したというのに
他人事のような反応をしている。




 最近の女性は強いのだなぁ~と感心して耳をダンボにして
聞いていたのは少し離れた|場所《ところ》で窓の外を見ながら
缶コーヒーを飲む相原
だった。






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