さよなら、サヨナラ……大切な人
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『おっ、掛居さんの温もりが~あったかぇ~。生き返るぅ~』
とか独り言ちている模様。
「相原さん、ただの同僚友人関係で一緒の布団は流石に
憚られますけども」
「うん、分かる。
女性からしたらそうだよね。
クリスマスっていうことで大目に見てよ。
クッション置いてちゃんと気遣い見せてるしぃ」
「そういうことじゃなくてですね……ンもう
しょうがないなぁ~」
と抗議と納得しているうちに彼に背後から
そっと抱かれていた。
包まれているようなふわっとした感覚だった。
なんか訳もなくガードがダダ下がりした瞬間だった。
「話があるって言っただろ?」
「ほんの少し前に聞いてるので忘れてませんよ。どうぞ……」
「これからの掛居さんとの付き合い方についてなんだ」
このシチュエーション、花は結婚を前提にした交際でも
申し込まれるのかと訝る。
このシチュエーションで訝るなどと思うなんて、素直じゃないと
自分でも思うけど。
交際を申し込むならほんの少し前にクリスマスをふたりで
楽しんだ駅近のお店の中でよかったはず。
……だからなのだ。
花はじっと相原の次の言葉を待つ。
「凛ね、実は俺の子じゃないんだ」
『あっ、やっぱりトンデモな話から始まるのね』
「へぇ~、じゃあ相原さんってバツイチじゃないってこと?」
「まぁね」
と彼はため息を吐く。
『何故にそんなに暗い反応なの?』
「たぶんだけど、このまま養子縁組してほんとの親子に
なると思う」
「独身なのに?」
「まぁ、そうかな」
◇ ◇ ◇ ◇
相原は他にも掛居との結婚を考えるに、不利な条件を
抱えていて彼女を好きでも結婚を言い出せないという
事情があった。
だが、なんとか掛居との縁を大事にしたいと考えている為、
素直に自分の気持ちをこの夜、どうしても伝えたかったので
ある。
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