さよなら、サヨナラ……大切な人

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 相原は残業しなくて済むようにいろいろ段取りをつけて
なんとか定時で上がり、掛居が自社ビルを出て来たところで
捕まえようと、さり気なく出入り口から少し離れたところで
彼女を待っていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇


 彼女の顔が見えてほっとしたのもつかの間、一緒に仕事を
している相馬が彼女の腕に手を掛かけたのが見えた為、一瞬の
判断で俺は足早に駐車場へと向かった。


 やはり昨日のメールで誘わなくて正解だった。
 
 約束していたらきっと彼女は仕事と約束の狭間で悩むことに
なっただろうから。


 相馬が掛居に正式に交際を申し込む予定でいることなど知らぬ
相原はお人好しな自分の感傷に浸りながら寂しく帰途についた。


 結局少しの期待をすぼめて帰宅した花金の夜。


 凛のこと、いつ迎えに行こうか、そんなことを考えつつ夕食は
野菜たっぷりのラーメンを作って食べた。



 凛がいない為、相原は久しぶりにたっぷりと睡眠を
とることができた。

 翌日起きたのは11時過ぎ。
 明日は日曜でクリスマスイブ。
 恋人たちには最高の日だ。


 自分も気軽に掛居を誘えばいいじゃないかと思うものの
昨夜意外な肩透かしを食らったのが結構きていて、どうしても
前向きになれないのだった。

『はぁ~、イブは年に一回しかなくて、一年に一度の
チャンスなのになぁ~』

 いかんっ、気持ちが上向きにならない。
 ソファに座った相原は前髪をかき上げ、大きなため息を吐いた。


 しばらくの間ソファに留まりまったりしていると荷物が届いた。

 見ると親戚の伯母からさまざまな野菜が100サイズで2箱、
箱いっぱいにビッシリと入れられている。



 レタス、じゃがいも、しょうが、玉ねぎ、長ネギ、里芋、
小松菜とあり、伯母の心遣いが有難かった。



 感謝しながら箱から出し、保存する為に小分けにしようと
仕分けを始めると、相原は閃いた。


 これをお裾分けするのに掛居の家へ訪問できる
|じゃないか《ジャマイカ》と。


 春子おばさん、ありがとっ。

 伯母さんのお蔭で俺、息吹き返したわ。




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