さよなら、サヨナラ……大切な人

 

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 そして明けて金曜日の朝、相馬さんと仕事の打ち合わせを
する。


「相馬さん、私今日は保育所の方の夜間保育には入らなくて
よくなりましたので、急な仕事がなければ久しぶりに定時帰り
したいと思います」


「そうなんだ。んっと……、大丈夫だと思う」

『よしっ、久し振りに早く帰れそう、やったー』

 ここのところ金曜は定時で帰れたことがなかったのでうれしい。

 凛ちゃんと相原さんに会えないのは寂しいけど。

 果たして……。

 勤務を終えて1階まで降り、1歩外に踏み出すと
晴れているものの薄暗く寒風が刺すように肌が痛い。


『ぎゃあ~、さぶっ』
 言葉に乗せて口からつい出てしまう。


 ふと見ると視線の先に相原の姿が……。
 少し離れたところに立っているのが見えた。

 今日はもう夜間保育もなくて会えないのだろうなという思いと、
そう思う一方でメールをもらっていたので少しだけ会えるかも
という期待もないわけではなく……みたいな、さまざまな感情に
揺さぶられた後のこと、うれしくなって彼に一声掛けて帰ろうと
そちらに向かうと相原が顔を上げたので手を振ろうとした
……のだが。

 
 花が手を振ることは叶わなかった。

 振るはずの腕を何者かに掴まれたからだ。

『えっ』

 見ると誰かの手が自分の腕を掴んでいるではないか。

 視線を手、腕、肩、そして顔へと辿るとそれは
相馬の顔だった。



「びっくりしたぁ~、どうしたの?」

「いゃぁ~、驚かせてごめん。
 実は急ぎの仕事があったのをすっかり忘れててね。
 申し訳ないけど少し手伝ってもらえないかな」


「いいですよ。早く片してしまいましょう」

 この前向きな言葉を聞き、改めて掛居に対する好感度が
更にアップする相馬だった。

『あ……そういえば』

 驚き過ぎて一瞬相原のことを忘れていた花は相原のいた方を
見るも、もはや誰もそこにはいなかった。


『声くらい掛けたかったなぁ~、残念』

 ほんの少しだけ相馬のことを恨めしく思ってしまう
花だった。





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