さよなら、サヨナラ……大切な人

 

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『私も小暮さんに右倣えしようっと』

 昼休みが終わりデスクに向かう私に横から相馬さんが
|揶揄《からか》ってくる。


「掛居さん、朝は幸せオーラ全開だったのにどーしたの?
 今度はお疲れモード全開だよ。
 こんな掛居さん珍しいよね」


「すごい、私のこと観察してるんだ。これからは気が抜けないな」

「分かった、分かった。
 いつも張り付いて見ないからちゃんと気を抜いて
くださいよっと」


「相馬さん、私もそれなりに心拍数の上がるようなことが
あるんです~。

 もう状況は上がったり下がったり、激しい激しい」



「そんなの聞くと『それってどんなこと?』って気になるけど
訊かないよ、安心して」


「はい、お気遣い痛み入ります」


 相馬さんと軽口を叩き合い、午後からの仕事は
スタートした。



 掛居と軽口を叩きあった週の金曜日のこと。

 相馬はこの日も残業で残っており、ちょうど20時過ぎに
仕事が終わった。


 1階に降りたところで
『そう言えば掛居さんは今日は夜間保育の日だったな』
などと掛居のことを思い出し、保育所のほうを見やると……。


 相原が子供を抱いて出て来た。


 相原の子供がほぼ毎金曜日、夜間保育に預けられている
ことを知る由もない相馬は、掛居と相原の急接近のことも
知らない。


『相原さんも子連れで大変だなぁ』

などと感慨に耽る間もなく、少し遅れて掛居が相原の後を
追うような足取りで自社ビルから出て行くではないか。


『考え過ぎ? たまたまだろ』


 そう思おうとした癖にちゃっかり相馬は二人のあとを
付けて行った。


 そこには興味という名の言い訳とプラスαの感情があった。



 そしてしっかりと見てしまう。
 掛居が相原の車に同乗し、一緒に帰って行くところを。


 相馬は考えた。



『今回たまたまなのか……それとも』

 どうしても確かめたくて次の金曜も二人の行動を
注視することにした。






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