さよなら、サヨナラ……大切な人
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「たぶん、私が子持ちの相原さんを狙っているなんて微塵も
想像してなかったんじゃないかな。
それと裏技使ったから油断したんじゃないのかしら」
「裏技って?」
小暮さんの問い掛けに何故か遠野さんは私の顔を窺う。
『なんで、私?』
そう思っていたら、とんでもないことを言い出した。
「次の休日に休日のサポーター保育員として凛ちゃんを
預かることになっていて、一度保育所の上司から住所を
教えてもらったけれど、
行き方に自信がないから教えてほしいって頼んだの」
『きゃあ~、なんて恐ろしい人なの。
呆れるやら、呆れるやら、もっとドンピシャな
言い得て妙的な言葉を口に出したいけど、言葉が出てこない。
そんな自分が恨めしい』
「うっわぁ~、それってバレるとヤバイ案件よ」
「落ち着いて! 大丈夫よ。
突撃したから相原さんにはどこかで情報取ってることは
バレてるけど訴えられてないしぃ」
「う~ん、そういう問題じゃないと思うけど」
「そういうのはひとまず置いといて、肝心なのは
この先の話なのよ。
聞いて、二人共」
「分かったわ。どうぞ」
「突撃したら……なんと、女の人がいたのよ。
がっかり……奥さんがいたのよ。
あぁ、違うかも、元が付くのかもしれないけど、
家に出入りしているみたいだから復縁するのも時間の問題かもね。
いやんなっちゃった」
「へぇ~、残念だったわね」
「だ・か・らぁ~、あなたたちも万が一にも彼を狙っても
駄目だからね。
これを教えてあげようと思って招集かけたの」
「そっか。私も掛居さんも気を付けるわ」
おだてにも取れるような無難で耳障りのよい言葉を
かけると遠野さんは満足顔でブースから出て行った。
呆れ顔で小暮さんが言う。
「何か、疲れましたね。
私たちに気を付けてって訳わからんことを話してる
自覚なしで。
今後、私は遠野さんとはなるべく距離を置くことに
します。
昼食もなるべく一緒にならないようにするつもりです」
「うん、そうね。
変なことに巻き込まれそうで一抹の不安を私も感じたわ。
もう放っておきましょう」
私たちの変に濃ゆい昼休みが疲れを伴ってようやく終わりを
告げた。
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