さよなら、サヨナラ……大切な人

 

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「いえ、別に私はそういうのは……」


「ええ、ええ。分かってます。
 私の勝手な言い草だと思ってスルーしてね。

 あぁ、面白がったりしているわけではないことだけは
分かってね。

 ただの私の勝手な想いなの。


 もう恋愛なんてっていう難しいお年頃になっちゃったので、
自分を可愛らしい掛居さんに置き換えて妄想して楽しんでるだけ。

 私じゃあ相原さんのお相手には絶対なれないから、ふふっ」




「可愛らしいだなんて……ありがとうございます、ふふっ。
 じゃあこれからかわゆい凛ちゃんの子守、代わりますね」



 芦田さんが奥でゆっくりしている間、私は凛ちゃんに
読み聞かせをしたり、積み木をしたりして凛ちゃんパパを
待っていた。



 凛ちゃんが待ちくたびれて私の膝にチントンシャンと座り
指吸いを始めた頃、|待ち人《相原さん》からメールが入った。



『帰りに送るので駐車場まで来て。
 車種はトヨタのプリウスで色はホワイト。
 一緒は掛居さんのほうがまずいだろ? 

 俺と凛は先に乗って待ってるから。
 え~と車は2列目の左から5番目だから』



 すごいモテてる相原さんから送ってあげるよとのオファーがあり
芦田さんや遠野さんの顔がチラチラ浮かんでちょっとビビった。


 先に乗って待ってるってすごいなぁ~。
 こういう風に気遣いのできる人なんだ。



          ◇ ◇ ◇ ◇



 保育所までお迎えに来た相原さんに、少し前に奥のスペースから
起きてきていた芦田さんが声掛けをして凛ちゃんを手渡し、
芦田さんと私から『お疲れ様でした』の声を掛けられ、相原さんは
いつものように部屋を後にした。


 すぐ後を追うことになっている私は気持ち、ギクシャク感
半端なかったけれど、その辺を片付けるとすぐに自分も芦田さんに
挨拶をして部屋を出た。



……ということで、凛ちゃんが寝ている側で他愛のない話をして私たちは
一緒に帰った。



 車で帰れるなんて、それも人様に運転してもらって、タクシーで
いうならお客様状態。


 楽チン過ぎて電車通勤が嫌になりそ。


『あーっ、やっぱり遠野さんの話、聞きたくなかったなー。
 遠野さんお願いだから私を恋愛事に巻き込まないでよねー』


 私はその夜寝る前にお祈りをした。




 でもあれよね、遠野さんに狙われてもしも相原さんが
陥落するようなことにでもなれば、もう今日のように車で
送ってくれることもなくなるかもしれない。


 そんなことになれば少し残念だなと思った。


 折角金曜限定だけどアッシーくんが見つかったのにさ、などと
斜め上を行く思考に陥ったのだがそれ以上の深堀をすることなく、
その夜、花は意識を手放したのだった。






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