さよなら、サヨナラ……大切な人

 


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 遠野さんの分かってます発言はほんとに分かっていての
発言なのか、非常に怪しい。


 最後の含み笑いは私を困惑させるのに十分な威力を
備えていた。


 周囲には隠して付き合っている、というストーリーが
彼女の頭の中で展開されている節がある。



 何故なら相原さんと付き合っているのか、という問いかけは
なかったからだ。


 まぁあれだ、彼女は小説を書く人だから、一般人よりは
妄想たくましい可能性はあるよね。


 相原さんとデートしたことなんて絶対知られないようにしなきゃ、
だわ。

 何気にこういうの疲れるぅ~。

 

「掛居さん、私、夜間保育をして少しずつ相原さんとお近づきに
なりたいんです。

 それで芦田さんに夜間保育をやりたいってお願いしてみようかと
思ってるんですけど、立候補したら迷惑でしょうか……迷惑に
なります?ご迷惑ならこの方法は止めなきゃ駄目ですよね」



 私は先ほどから遠野さんの言動に驚かされてばかりなんだけど、
今の話を聞いて更に『目玉ドコー』な感覚に陥った。

 なんて言うんだろう、彼女のお伺いって控えめさを装った強引な
お願いにしか聞こえなくて、少し嫌な感じがする。


 元々こういうキャラの|女性《ひと》だったのか、はたまた
片思いが高じた所以のものなのか。



 よく考えてみたら私が持っていた遠野さんのイメージなんて
たまに社食で昼食を一緒に摂るだけの間柄で何を知っていると
いうのだ。



 恋する乙女は貪欲で猪突猛進で……私は恋する乙女? の
力強さにある意味感服するところもあるけれど、自分に
置き換えてみるに、とてもそんな風な形での力強さは
一生掛かっても持てそうにないや。






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