さよなら、サヨナラ……大切な人

❦92話が手違いで26日にupされていました。

今気づきました。

すみませんでした。(^^;
 

90



「それで?」
と相馬さんに続きを促しながら頭の片隅で相馬さんが醸し出す
不思議な雰囲気の理由が分かり私は少し興奮してしまった。


『結婚するつもりがない』という、これだったのかー、と。
 謎が解けたスッキリ感。


 続きはどうなったのか、野次馬根性が顔を出す。




          ◇ ◇ ◇ ◇


「『私たちのことですけど……』

『……?』

『お付き合いして正確にはまだ1年じゃあないですけど、
毎日職場で会ってるしどうですか? 

 そろそろ婚約とか、結婚に向けて話を進めてもいいと
思うんですけど』
って言われて僕は腰が抜けるほど吃驚してね。

 付き合ってることになっているなんて、どこをどう考えれば
僕たちが付き合ってるーっ? てね」




「わぉ~、それは大変なことになったんですね」



「店の中で泣いたり怒ったり、彼女の独壇場だった。

 とにかくこれ以上何か言われても僕は結婚は無理なので
はっきり言った。


『魚谷さんの中でどうして僕たちが付き合ってるっていうことに
なってるのか分からないけど最初宣言していた通り僕は誰とも
結婚しないから、その提案は無理です』



『相馬さんがそんな不誠実な人だったなんて、最低~』

 そう言い残して彼女店から出て行って、翌々日人事から
彼女が辞めることを聞いたんだよね。

 なんかね、今考えても狐につままれたような気分なんだよね」




「彼女に対して思わせ振りな態度、全くなかったのでしょうか」




「ないよ、信じて掛居さん。

 そうそう今言っとく。

……ということで僕には結婚願望は微塵もないのでフレンドリーに
なれればそれはそれでうれしいけれど、それ以上でもそれ以下でも
気持ちはないというか、上手くいえないけど今度こそ長くパートナ
ーとして一緒に仕事を続けていってもらいたいので話しとく」




「分かりました。

 金輪際、掛居花はどんなことがあっても相馬綺世さんに結婚を
迫ったりしないことをここに誓います。

ご安心めされよ」




「良かったよぉ~、掛居さん」



 そういう風に泣くほど喜ばれた私の心中はちょい微妙な風が
吹いたのだが、今までの相馬さんが遭遇した不可抗力な
恋心系事件簿のことを思うと仕方ないなぁ~と思った。



「今度一緒に働けるのが掛居さんでほんと良かったわ」



「相馬さん、私に惚れられたりしたらどうしようって、
もしかして少し心配してました?」



「いやぁ~なんかそこまで自惚れてるって思われるのも
辛いんだけど、少し思ってた……」



「ふふっ、そうですよね、そんなことを経験してると
そう思っちゃいますよね。

 私が言うのもおこがましいですが、それでもいつか
相馬さんの抱えてるトラウマっていうヤツを跳ね除けて
相馬さんの胸に飛び込んでいける|女性《ひと》の出現があれば
いいなと思いますけどね。

 あっ、ご心配なく、私はいかなることがあろうとも
飛び込みませんからねー」




「ありがと。掛居さんっていい人だな。
 僕明日から仕事頑張りますよ」



「ふふっ、私も精一杯頑張りますので今後とも
よろしくお願いします」






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