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その週の真ん中に母親から電話が夜に入った。
『理生、さっきね雨宮さんのお母さんから電話があってね、週末
両家6人でお会いしたいって。
どんなことなのか一切内容はおっしゃらなかったけど、なんか
いい話という雰囲気でもなくてね、理生、何かあったの?
心当たりある?』
『あるけど、今話すとややこしくなりそうだからちょっと待って。
はっきりしたら言うから』
『そう? 折角の良縁が駄目になったりしないわよね?』
『お母さん、悪いけど今は何も言えないの。
ごめん、電話切るね』
母からの電話で、今まで呆けていた頭がキーンって
クリアになっていく。
雨宮さんは私には直接何も言わず、両家に話を
移そうとしている。
大変なことになりそう。
私はここで初めて彼に連絡を入れた。
着信拒否されていた。
ここに来て、謝罪もさせてもらえないのだということに
気がついた。
だとすると、両家の話合いというのは『婚約破棄』が濃厚だ。
私は前回の失敗を何も生かせていなかった。
同じようにふたりの男性の間で気持ちが揺れてどちらとも
上手くいかなかった。
優柔不断で当時はそのような結果になってしまい、今回は
自分の狡さと不誠実さが招いた結果なのだ。
私は頭を抱えた。
その週は週末まで仕事も手に付かずずっと心ここに非ず状態で
過ごした。
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