さよなら、サヨナラ……大切な人

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 私は翌朝、独りで皆より一足先にホテルを後にした。


 星野が一緒に帰ると申し出てくれたけど、折角なのに
もったいないから宮内さんとちゃんと楽しんでから
帰ってほしいと告げて自分だけで帰路についた。


 馬鹿だなぁ~、雨宮さんとのことが知られても柳井さんに
振られるなんてことは思ってもみなくて、私っておめでたい
女だわ。

笑えるー。


 こういうの過大評価? 自信過剰っていうんだったっけ?



 私は人から見ればとんでもないことをやらかしているにも
係わらず、自分の手から抜け落ちて行くのはふたつの内の
ひとつだけと考えていた。



 当初、柳井さんとの結婚を夢見て、雨宮さんとのことを
いつ切ろうかって考えてた。



 だけど頼みの綱の柳井さんから迷いなくいとも簡単に
お別れを言い出され、ぼーっとした頭でじゃあこのままやっぱり
雨宮さんと結婚するのだと単純に考えて帰宅した。


 柳井さんも言ってたようにまずは謝罪しないとね。

 すぐに連絡を入れて謝罪しないとと思うものの、どうしても
連絡を入れることができなかった。


 あんなに私にご執心だった柳井さんから簡単に手放すと言われ、
私はとても落胆したのだ。


 好きになった人から、好きだと言ってきた人からそんな風に
扱われ、悲しくて惨めで……人の気持ちのなんと脆いこと。



 自分の悲しさに浸り、雨宮さんのことまで私は頭が
回らなかった。


 酷いことを仕出かして傷つけた人に思い遣りも持てない
自己中な人間、それが私だった。


 私は自分の汚さもこの時知ってしまった。


 もし柳井さんが普通の一般家庭の人だったらどうだっただろう
って考えてしまったせい。


 雨宮さんとの婚約を破棄してまで付き合いたいとは思わなかった
だろうと、そう結論づけたから。









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