さよなら、サヨナラ……大切な人

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「そうですよね。
 私、そうします。

 あんな薄情な|男《ひと》とはお付き合い止めます。

 私、今日井出さんに会いに来て良かったです。

 きっとこんな風に背中を押してくれる人を探していたんだと
思います。ありがとうございました」


「前向きに考えられるようになってほんとに良かった。
 玲子さんにはお灸をすえておきますからね」


 若くて可愛らしい内野さんは少しの笑顔を取り戻して
帰って行った。


『島本玲子……やっぱりやりやがった』
 これでお前の地獄行きが決定だ。


 井出耕造48才、島暮らし。
 ただし、ほんの1年前からの。
 作られた島での俺の設定。

 総帥からの依頼だった。

 玲子がこの島で改心して暮らせば放流してやろうとの
お考えだった。

 反省もなく、異性トラブルを犯せば今度こそ直接総帥から
厳しいお沙汰がくだされるだろう。

 馬鹿な女だ。

 あれほど真面目に暮らすよう忠告してやったというのに。
 三つ子の魂百までとは昔の人はよく言ったものだな。


 見た目と中身の釣り合いが取れていない残念な女だ。

 どんな男をも虜にできるほど美しいのだから
何もわざわざ人のモノに手を出さずとも言い寄って来る男は
たくさんいるだろうに。


 つくづく厄介な|性《さが》を持って生まれ落ちたものだ。

 一応この話が本当か井出は証拠取りをすることにした。

 内野さんが有給を取って俺のところに来た日、その日の内に
人を使っての裏取調査を依頼した。

 内野さん自身がすでに恋人である宅麻から|言質《げんち》を
取っているようだし十中八九虚言ではないと思うが、間違いを
犯さないための裏取は|必須《ひっすう》だ。

 2日後、内野さんの話に虚偽はなかったことを立証する
報告書が届いた。

 これでこの先俺がどう動けばいいのかが決まった。

 |彼女《玲子》は最後のチャンスを失った。



         





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