さよなら、サヨナラ……大切な人

     

 

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◇食わせ者/妖女


 俺のアドバイスを守り、朝な夕なに謝るべき人たちに謝罪をし、
神仏にもすがっている様子が伺えた。

 仕事も真面目に続いてる。

 俺は玲子から悪夢の話を聞いた日にいろいろアドバイスしたのだが
その時にこんなことも彼女に提案してあった。

 石の上にも3年という諺があるように修行と思い3年間は
我慢をして、この先3年は独りで慎ましく暮らすこと。

 元々今回のことは色恋を|拗《こじ》らせた結果だからね、と。


 一度彼女が悪夢でうなされて起きた時、ちょうどまだ俺が仕事で
起きていたのだが何気に『怖い』と言って俺の側近くにすり寄って
来たことがあった。

 つくづく彼女は魔性の女だと思ったね。

 出会いがこんな形でなければ俺もあの場面で据え膳を食わずに
いられたかどうか、はっきり言って自信がない。

 もうアラサーの域にかかっている女だがまだまだ十二分に
美しさを保っているからね。

 彼女は果たして残りの2年と数か月を果たして大人しく
地味に淡々とやり過ごしていけるのだろうか。

 杞憂に終わればと思っていたのだが……。


 ◇ ◇ ◇ ◇




 平日の昼下がりに初めて見る顔の来客があった。

「井出ですが何か……」


「初めまして、内野と申します。
 井出さんは島本さんの身元引受人ということになってらっしゃる
ので彼女のことでご相談に上がりました。

 どこかでお話を聞いていただけましたらと思います。
 あの……突然のことで申し訳ありません」


 彼女は玲子が通っている特別養護老人ホームに勤める
看護職員であると自己紹介してきた。


 心を落ち着かせ、宥め、私に話をしようとしている姿が
痛々しかった。

 彼女の様子から俺は何やら胸騒ぎを覚えた。




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