さよなら、サヨナラ……大切な人

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 息子の洋輔には週の真ん中あたりで父の茂から家族全員で週末、
自分たちの|息子《匠吾》が仕出かしたことへの申し開きに来い
とのお達しがあった。


 洋輔から話を聞いた沙代はそうなるだろうとは思っていたが、
何を言われるのかと憂鬱だった。


 当日息子の匠吾が驚きのあまりテンパってはいけないと、
この際だから匠吾の出生の秘密を本人に話すことに決めた。
 

 その日職場から帰宅した匠吾と沙代は、夫の洋輔抜きで
話をした。


 先ずは祖父の茂からの招集が掛かったこと、それでその前に
どうしても話しておかなければならないことができたことなどを
説明した。


「匠吾はおじいちゃんのことをどの辺まで知っているのかしらね。
 まぁ世が世なら元は華族様で旧財閥の総帥って辺りまでは
なんとなく知ってると思うけど……」


「うん、そうだね。知ってる」

「おじいさまにはね、裏の顔っていうのかな、ここ関西一円で
力を持つフィクサーでもあるの」


「マフィアのボスみたいな?」


「マフィアはどうだろう、微妙に違うような気もするけれど
私もちゃんとした説明は難しいわ。

 簡単にいうと忠誠を誓い懐にいる時は困った時いつでも
助けてくれる人、だけど……具体的にいうと可愛い孫娘を
裏切ったりすると即座に敵になって沈められる? 
物騒だけどそういうこと」


「身の危険があるっていうこと?」


「|お父さん《洋輔》の前では言えないけど、そういう可能性は
あるんじゃないかと私は思ってる」

「だけど、花と同じで俺も孫だよ」


「そう花ちゃんと同じ孫なら痛み分けにしてくれたかも
しれないんだけど……」


「えっ……もしかして違うの?」


「匠吾、落ち着いて聞いてね。
 お父さんは初婚だけど私はあなたを連れての再婚なのよ」

「じゃあ、俺って……」

「そう表向きは孫だけど、おじいさまともお父さんとも
血の繋がりはないの。


 私はあなたが花ちゃんと結婚したらその後に本当の話をしようと
思っていたの。

 だけど今回おじいさまに詫びを入れなきゃならなくなって
しまってそうもいかなくなってしまったわ。

 きっとおじいさまはあなたの実の父親の話を出してくると
思うから、その時にあなたが動揺しないよう先に話しておくことに
したの」


「父親のこと話して……」


 

 


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