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 俺の中で想定された設定はこうだ。


 車がカーブを曲がりきれず崖下に落下。

 女性は車から放り出され、男は車の中に取り残された。


 服装の違いもあり女性は怪我もあり寒さで凍死。

 男は打撲や切り傷があるものの致命傷はなく、また防寒着を
着ていた為凍死は免れる。


 こんなストーリーでこの後進むはずだ。
 俺は瞼を閉じた。
 まんじりともせず、夜が明けた。



 さてどれくらいで意識が戻ったことにしようかと考えていたら、
うまい具合に事故に気付き通報してくれた者がいたようで、
俺と根米はほどなくして救急隊員やレスキュー隊員たちに
救助された。



 病院での治療が終わると警察から取り調べを受けた。
 想定内だ。


 シートベルトの着用を免許保持、車の保持者としての責任から
根米菜々緒にはちゃんと進言したが彼女の強い拒絶があり、
そのままドライブに出かけてしまったと警察では証言した。



 ……が、当初は過失致死罪になるかもしれないと
告げられていた。

 だが遺族到着後の話し合いでそれは簡単に
ひっくり返されることになった。


『昔からこの子にはそういう無頓着なところがあったのよ、
ほんとにバカな子』そう母親が発言したからだった。


 お蔭で遺族から訴えられることなく皇紀は不起訴となった。


 こんなに簡単でいいのかよ。

 警察はいろいろと俺と菜々緒の過去事情を調べて
不振に思わないのかよ。


 遺族も娘を亡くしたっていうのにあまり悲しそうじゃない。

『えーっ、人生こんな簡単でいいのかよー』最後は叫んでいた、
そう叫んでいた俺はバッと飛び起きた。


          ◇ ◇ ◇ ◇


 空調が効いてるとはいえ寒い真冬だというのに
びっしりと俺は寝汗をかいていた。


 生々し過ぎて一瞬自分がどこにいるのかあやふやだった。


 俺は根米憎しから復讐劇を夢の中で見ていたらしい。

 俺は本当に根米が憎くて仕方がないことを再認識した。


 やけに上手くいくはずだよ、夢なんだからさ。


 現実はそうそう上手くいくもんか。

 俺の意図するところなど警察に調べられれば
すぐにばれただろう。


 今度こそ傷心を抱えたまま、まだ退去してない自宅に
皇紀は帰って行った。




 

  


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