24.
" Heart 胸の内 "
私も小野寺さんに会ったのはあの日が初めてで、どんな人なのか
知らなくて、夫の人選頼みってところだったんだけども。
夫の職場って、そもそも独身男性って少ないみたいで、小野寺さんの
他に2人いるんだけど23才と25才の男子だから人選も何もあったもんじゃ
ないっていうか、小野寺さんしかいなかったみたいで、私、心配
してたんだけど、まぁ、なかなか見た目も中身もバランスの良い人に
見えたから当日、ほっとしてたところ。
そーそー、話に出なかったけど、うちの主人も小野寺さんも
お給料はそこそこ貰ってるから専業主婦になろうと思えば
可能よ。
そんな話まだ早いかもだけど、一応出し忘れてた情報って
ことで」
「知世さん、ほんとに良い人を紹介してくださってありがとう
ございます。ご主人にもよろしくお伝えください」
「はい、判りました。
主人にもガキさんからの伝言必ず伝えておくわね」
そう言うと外食の知世さんは手を振って外に出て行った。
私は先日の時間が良い時間だったことと、素敵な人を
紹介してくれたことへの礼だけを述べるに留めた。
謙遜して自分を卑下して見せるのは、忙しい中わざわざ時間を
作ってくれた知世さんたちご夫婦に失礼にあたると思うし、実際
こういうことって、本人たちしか動かしようがないものだしね。
折角後のことは、ノータッチと言ってくれているのだから
そのつもりで動くつもり。
25.
" Boom 儲けもの (ん)"
今の職場では、結婚を考えられるような出会いは望めないし
亀卦川くんとは今はもう止めたとはいえ、人様に言えないような
関係になっちゃったりして、不倫? 日陰の身? いつの時代の単語だよ
って・・・。
とにかくそういうのじゃなくて独身者同士で、後ろめたさのない出会いで
デートなんてこの先あるなんて考えたこともなかったから、ほんと儲けもんだよ桂子。
今回の出会いを、素直に私はそう思えたのだった。
その週の木曜の夜に小野寺さんからメールが入った。
「こんばんは。この週末も釣りに行きますか? 」
たった一行のメールだったけど、連絡なんて来ないだろうと
思っていたから少しびっくりした。
私は普段何も予定がなければ大体、家でごそごそしているか
月1ペースで定期的に釣りに行ってるので・・・
「他に特別な用事が入らなければ土曜の早朝から行こうと思ってます」
と、彼よりは少し長い文章で返した。
「先日楽しかったので今回もお供させてください」
「いいともぉ~!」
待ち合わせの場所や時間を打ち合わせして、土曜日私たちは
釣り場に合流した。
小野寺さんと行くことになったので、私は地元民しか? というより
私しか知らないんじゃないの? と思える程、釣りに行っても
一度も他の誰かと一緒になったことのない、特別な川に行くことに
したのだった。
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