91.☑
この年の9月は8月に比べれば平均気温が4~6度ほど低く
なったとはいえ、ダラダラと暑い日が続いた為、子供たち
の外遊びの時間は8月と同じように短めに切り上げ、一日
の大半は部屋の中と家周りで遊ばせて過ごした。
庭先で、プラスチックでできた金魚をビニールのプール
に浮かばせて皆で金魚すくいをしたり夜には花火をしたり
暑い暑いと言いながら、賑やかに子供たちや神谷さんと過ご
した9月は、あっという間に過ぎ去っていった。
・・・
妻に先立たれてからというもの、実家とは諸事情で疎遠
な状況だった為、周りには誰一人頼れる者はおらず、毎日
暗い気持ちで子育てに励んできた。
そんな中、少しの光が見えたのはWeb上での相談できる
掲示板での交流だった。いろんな人から親切な助言をもら
い、その日その日をなんとか凌いで生きてきた。
そして子供たちの母親になってくれるという女神のよう
な女性も現れて、ようやく神谷も将来のことを考えられる
ようになり、前の職場に顔を出してみて復職が駄目なよう
だったらどこか新しい仕事を見つけないと、などと少し胸
膨らませていた。
91-2.☑
香は時折側にいる神谷にじっと見つめられることが度々
あることに気付くようになった。
何なのだろう?
私に恋するようにでもなったとか?
・・・いやいや・・ソンナワケ・あるはずない。
香は昼食の片づけで洗い物をしていて、神谷は何か言い
たそうにしていたが、香が洗い物に集中し始めると自分も
掃除機を取り出して掃除機をかけ始め・・。
子供たちを昼寝させた後のほっとhotの午後のティータ
イム・・に。
「香さん、何から話せばいいか・・」
おっと彼はやっと話す気になったようだった。
「大きく分類して、子供のこと? 私たちのこと ?
仕事のこと? 結婚について? 気持ちが変わったとか? 」
「仕事のことなんだ」
「いいところ見つかったんですか? 」
「いや、それはまだなんだけど・・」
「実は長年音信不通だったお袋から連絡があってね。
家は祖父の代から興こした会社を今は親父と兄貴が
経営してるんだけど今、兄の体調が思わしくなくて俺に
帰って来てほしいって」
「音信不通って・・どうして」
神谷さんのお兄さんの様子も気になったけれど音信不通
だったことのほうがもっと気になってしまって思わず問い
詰めてしまった。
音信不通、ずばり絶縁ということらしい。
「いつかは香さんに話しておかないといけないって思っ
てたけれど、それはもう少し先でもいいかなって思ってた
んだ」
そんな風に彼は、絶縁にまで至った実家との、ご両親と
の、確執を話してくれた。
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