Spitfireリニューアル | PENGUIN LESSON

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音楽制作や映像編集のビデオ教材スクール「ペンギンレッスン」のブログです。この夏開講予定です。ただいま全力制作中です。音楽制作の様々な情報を発信していきます。Twitter(@othersidemoon)でつぶやいています。


精力的に新しいオーケストラ音源を制作しているデベロッパーの中で現在最も信頼しているのがSpitfire Audioです。派手な音作りではなく、各楽器の最も美しい音色を丁寧に録音しています。良いプレーヤーを良いホールで良いエンジニアが録るという基本姿勢がブレない限りこれからも応援していきます。

少し前にSpitfireのウェブサイトがリニューアルされ、サービスの提供の仕方が変わりました。まずPaypalでのお会計が打ち切られました。今後はクレジットカード決算のみになるそうです。

多くのデベロッパーがお会計の手段として採用しているPaypalですが、昔はアカウントを持っていなくてもクレジット決算を選べました。ところがSable1が発売になった頃にアカウントを作らないと一定額以上の買い物ができなくなり、私はその時に初めてPaypalアカウントを作りましたが、本人確認のプロセスが結構面倒で電話で話した後に郵便で認証コードが送られてくるなど時間がかかり過ぎてSableのイントロセールを逃した残念な思い出もあります。

これだけ本人確認のプロセスに力を入れているのにも関わらず、実際には不正利用が絶えないらしく、SpitfireもPaypalによる被害にあってしまったようです。今回のPaypal切りは私のようにPaypalを通してクレジットカードで支払っていたユーザーにとってはPaypalの異様に高い換算レートでなくなるのでプラスですが、銀行引き落としにしていたユーザーにとっては痛い変更点かもしれません。

音源のダウンロードの仕組みも変更になりました。これまで多くのデベロッパーが採用しているConnectを使っていましたが独自開発のSpitfire Audio Library Managerになりました。Connectのダウンロードの不安定さを経験したことのあるユーザーは多いと思います。順調に行くときはそれほどストレスを感じませんが、それほど容量の大きくない音源のダウンロードに3日かかったこともあります。

ただConnectには大変便利なところもあります。ダウンロードするためのコードをきちんと保管しておけば何度でも自由に再ダウンロードできます。手元にディスクが残らないダウンロード販売において、再ダウンロードが容易であることは大きなプラスです。私も以前アップデート時に結合しなければいけないファイルをうっかり上書きしてしまったことがありましたが、Connectから大本のライブラリを再ダウンロードすることで自己解決できました。

Spitfire Audio Library Managerに変更されてからは、再ダウンロードが必要な時はメールで事情を説明してメーカー側でリセットをかけてもらう必要があります。頻繁に必要なことではありませんし、きちんとバックアップを取っておくのは基本ですが、何となく不自由に感じてしまいます。

すでにLibrary Managerをインストールしている場合も、新しい音源をダウンロードする前に必ず最新版をインストールし直してください。何回ダウンロードを実行しても必ず途中で止まってしまう不具合にいきなり遭遇してしまいましたが、1つ古いバージョンだったことが原因でした。導入されたばかりでもうアップデートされていることに気づきませんでした。

ダウンロードを開始する前にライブラリ名の横の矢印をクリックしてダウンロード先を指定してください。そうしないとメインのドライブにダウンロードされます。新規購入の場合は後で移動すれば構いませんが、アップデートの時はすでにインストールされているフォルダに自動的に統合しますので正しい場所が選ばれている必要があります。その時、その音源のフォルダそのものではなく1つ前の階層にあるフォルダ(その音源のフォルダが入っているフォルダです、ややこしいね)を選ぶことに注意してください。

Sableは4つのボリュームに分かれているため、私は使いやすいように勝手にフォルダの中を整理していました。またフォルダの名前も全てが「Spifire BML」から始まっているので、パッと見て中身が判別できるように勝手に変更していました。さらに音源用のPCはネットにつないでいません。そのため今回Sableのアップデートのためにフォルダの中を元通りに整理し直し、名前を元に戻した上で、ネットにつないであるMacに移動する必要がありましたが、アップデート自体は素晴らしくスムーズでアップデートの内容にも満足しています。現時点ではメインマイクのみのアップデートなので、今後AltマイクやStereoミックスのアップデートの度にファイルを移動するのは若干面倒ですが、手動でファイルを統合しなければいけなかった従来のやり方よりも全て自動で行われる新しい仕組みのほうがユーザーフレンドリーであることは言うまでもありません。

Sableの4つのボリュームをまとめた統合パレットは予想以上に使いやすく、理想的なアップデートだと感じています。完全にアップデートが完了した段階でまたレビューしたいと思っています。East Westなどに対する不満の1つが各パッチが分かりにくいことなので、今後すべてのBMLシリーズが統一された「パレット」の仕組みを取ってくれるだけで大幅に作業を効率ができると期待しています。

Spitfireの素晴らしいのは、作曲家ごとにワークフローが異なることを理解し、様々な組み合わせのパレットを用意しているだけでなく、必要な奏法を必要な形で読み込めるようIndividual brushesという各奏法の独立したパッチも用意してあることです。メーカーのキースイッチを押し付けることもせず、自分でカスタマイズすることも、キースイッチを使わない方法も提供していることです。キースイッチを心から嫌う(笑)私にとってこんなにありがたいことはありません。

現役の作曲家が自分たちが使いたい楽器を作るというコンセプトとユーザーからの意見を積極的に取り入れる柔軟さ、何年先までも改良を続けたり追加録音を行ってアップデートを提供してくれる寛大さ、何より録音に関わった音楽家にきちんと印税を支払う数少ないデベロッパーであることが、元スタジオミュージシャンである私がSpitfireを信頼している理由です。