リファレンスヘッドホン | PENGUIN LESSON

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音楽制作や映像編集のビデオ教材スクール「ペンギンレッスン」のブログです。この夏開講予定です。ただいま全力制作中です。音楽制作の様々な情報を発信していきます。Twitter(@othersidemoon)でつぶやいています。

音楽制作でも音楽鑑賞でも95%スピーカーでしか聴いてこなかったので、これまでヘッドホンはスタジオで指揮や演奏をするときや確認用を除いたら、基本的に電車の中など屋外で音楽を聴くとき専用でした。特に私は左耳の聴力が右と比べて大幅に弱いため、なるべくヘッドホンで作業しないように意識していました。

ところが打ち込みで素晴らしいオーケストラのモックアップをしている人に話を訊いたり海外の作曲家のフォーラムでの書き込みを読むと、打ち込みからミックスまで全てヘッドホンでやる人が予想以上に多く、少しずつ考え方を改めるようになりました。「この人の音好きだな」と思ったミックスエンジニアにもヘッドホン中心で確認用にスピーカーで鳴らすという人が結構いました。

「最近は出来上がった音楽を聴いてくれる人の9割以上がヘッドホンやイヤホンで聴くのだから、その環境で作業すべきだ」

こういう意見を多く目にするようになりました。

スピーカーで音楽を聴くとき、左右のチャンネルは完全に分離しているわけではありません。左耳で右のスピーカーの音も聴くし右耳で左のスピーカーの音も聴きます。でもヘッドホンでは完全に分離しています。きっとどちらを中心に作業したかで音は大分変わってくるのではないでしょうか。

音楽制作には極力味付けされていないフラットな音のモニター用ヘッドホンを使うのが一般的です。リスニング用のヘッドホンはかなり個性が強いものが多く、正確な判断がしづらいからです。

とは言うものの、モニター用として売られているモデルも聴き比べると音の印象はそれぞれかなり異なります。ですので、自分がよく知ったCDなどを普段からそのヘッドホンで聴き、その同じヘッドホンで自分の制作中の音も聴くことで、そのヘッドホンの特徴にアジャストしていく必要があります。

よって楽しく鑑賞することを第一の目的に作っていないモニター用でも、自分の好きなジャンルやアーチストの音楽を楽しく聴けることがリファレンスヘッドホンを選ぶ大事なポイントだと思います。

恐らく日本で最も多く使われている定番のリファレンスヘッドホンはSONY MDR-CD900STです。どこのスタジオに行っても大体置いてあります。うちの事務所にもいくつかあります。この音がひとつの基準になりますので、試聴してみて合うのでしたら最有力候補でしょう。

でも残念ながら私には合いませんでした。何度聴いても、自分が好きで好きで仕方ないアーチストの音楽がちっとも楽しく聴こえないのです。音楽を聴くというより音を聴いているという印象で、音楽に没頭できず、また軽いのに長時間つけるのがつらいです。作業用ですから、長時間つけても負担に感じないことも選ぶ上で大切です。

日本ではCD900STが定番ですが、アメリカのスタジオで一番よく見るのはAKG K240 Studioです。私もはじめてスタジオで仕事をした時に目にしたモデルですし、憧れのゴールドスミスが指揮している写真でも頭にK240 Studioが乗っていたので同じものを買い求め、後にK701も買い足してリファレンス用に長い間使ってきました。

長く使っていても疲れないのと好きな音楽を楽しく鳴らしてくれたので私には合っていたのでしょう。ただ他と比べると低音が弱く、粗がやや見えにくいため、全てのジャンルのミックスには適さないように感じています。

ハリウッドで特に打ち込みでオーケストラ音楽を作っている作曲家の間で今よく使われているのはBeyerdynamicsのDT880proとaudio-technicaのATH M-50で、共にミックスまでほぼヘッドホンで制作する人がよく名前を挙げています。

私はaudio-technicaは持っていませんが、ベイヤーは熱狂的に好きで3兄弟を所有し特に観賞用にDT990を愛用してきました。AKGが低音弱めなのに対して、DT990は低音がしっかり自己主張するので、うまく補完しあっているようにも感じています。

とは言え前述のとおり最近まで仕事でも趣味でもあまりヘッドホンを使っいなかったわけですが、信頼している何人かに続けて「ヘッドホンのみで制作しているよ」と告げられ、ヘッドホン熱が出てきました。専門店でかなり時間をかけて評判の良いモデルを聴き比べた結果、最も好みに合ったのがベイヤーのT1でした。結局T1と電車の中用にDT1350を一緒に買ってしまいました。心から好きな音に出会った結果、少しずつヘッドホンで音楽を聴く時間が増えてきています。

そこまでヘッドホンに詳しくないのにブログに書いた理由は、今日出会ったYAMAHA HPH-MT220が大変気に入ったからです。これまで学生にもよく「ヘッドホンのオススメは?」と訊かれてジャンル的に合いそうな人にはAKG K240を勧め、それ以外ではMDR-CD900STが一応定番だからと名前を挙げていました。

MT220は細部までよく確認でき、低音もきれいに出ていて、全体に元気で迫力のある音が鳴っています。モニター用として忠実な音を鳴らしてくれるだけでなく、ちゃんと音楽を楽しめるサウンドで、聴き始めた瞬間からしっくりきました。やや重たいのですが、メガネのままでも違和感はなく、疲れにくそうな作りなのも嬉しいです。

これまでスピーカーではなくヘッドホンでミックスするというのがイメージできなかったのですが、MT220でならミックスしてみたいなと思いました。今後、制作用のヘッドホンでオススメを訊かれた時に、自信を持ってMT220を勧められるんじゃないかなと感じています。

追記: オーディオテクニカのATH-W5000が良いというコメントをいただきました!「基本性能がとても高く、鳴りのバランスもフラットでどんなに小さく細かい音でも拾ってくれます。装着感も良好で眼鏡をかけながら作業していても疲れません。音数の多いモックアップのバランスを確認するといった用途には最適のヘッドフォン」と聞き、これは早く試聴してみたくて仕方ありません。オーテクのフラグシップにふさわしい高級感のある木が素敵ですよね。その分いい値段ですがぜひ試してみたいです。

ヘッドホンはあまり使ってこなかったので、オススメがあればぜひ教えて下さいね。