後悔先に立たず
おはようございます。英写塾@石渡です。
今日取り上げる英文はこちら。
It's better to regret
what you have done
than what you haven't.
出典)Whatever You Think, Think the Opposite
以降、Whatever You Thinkで示します。
出典の邦訳)『PLAY・JOB (プレイ・ジョブ)』
著者)Paul Arden
今日は英写塾第1シーズン最終回。
「今日の英文」は、私のお気に入りの著者のひとり、Paul Arden氏のWhatever You Think から引用しました。
Whatever You Think は英文がとても少なく、すべての見開きページにイラストや写真が載っていて、英語にあまり自信がない人でも楽しめる本です。
今日はまず私の体験談をお話ししようと思います。
就職と転職の話です。
私は、大学卒業後は銀行に就職。
世間体も給与もよく、親が安心してくれそうだったからです。
地味に慎重に定年まで勤め上げる、静かな職場。
そんなイメージを抱いていた私は、あまりに世間知らずでした。
現場は、ノルマに次ぐノルマ。
達成できない人には執拗に罵声が浴びせられる、体育会系で営業中心の企業だったのです。
新入社員は、2年ほど預金や融資や外国為替など、ひととおり内部の事務を経験させられた後、営業の現場に配属されます。
私は、よりによって全国でも有数の営業激戦区に投げ込まれました。
ここである程度の実績を残せば、出世の高速道路に乗ることができるのだそうです。
「君には大きなチャンスが与えられたのだから、がんばれ」
「求められた実績を残せなかったら、どうなるのですか」
「まあ、そのときは、それなりのコースを歩むことになるだろうな」
営業チームでは私が最年少。
ドジで間抜けでノロマな新人が、入ってきてしまいました。
先輩方は「どんくさいやっちゃなあ」「おまえ、あほちゃうか!」などとあきれながらも、かわいがってくださいました。
取引先の社長さんや社長の奥さんも、ときに厳しく、ときに優しく、商売の基本、営業の基礎を教えてくださいました。
ここでは、本当に多くのことを学ばせてもらいましたし、お世話になった方々には感謝してもしきれません。
仕事には少しずつ慣れていきましたが、問題がありました。
それは私自身の営業力です。
激戦区なだけあって、抜群の営業力を持っている人が集結。
人の気持ちをつかむ天性の力、話術、瞬時に損得のソロバンを弾く力、ノルマに対する闘志、そして出世欲。
すべてにわたって圧倒され、とてもかなわないと痛感することが多々あったのです。
足を引っ張らないでついていくだけで、精一杯でした。
いろいろなことを思い知らされ、自分が得意だと思っている(あくまで思っているだけですが)分野で勝負をするために、語学系出版社の採用試験を受け内定をもらいました。
「悪いことはいわないから、やめておけ」
「出版社なんてどこも、いつつぶれるかわからんぞ」
「お前もあともう少し頑張れば、いい部署に異動になるのに。こんなことして、ぜったい後悔することになるぞ」
いろいろと諭されましたが、気持ちはかわらず、最後は円満退社をさせていただきました。
このときに思ったことが、ある英文に凝縮されていました。
それが今日の英文です。
It's better to regret what you have done
than what you haven't.
幹は簡単に見つかるはずです。
It's better to regret A than B.(Aを後悔するほうがBを後悔するよりもいい)。
what you have doneはAに相当し、「あなたがしてしまったこと」。
youは一般的な人を表しています。
この部分は、現在完了形になっていることで、今とのつながりが強調されています。
つまり、「過去にしてしまったことが今も尾を引いている」イメージを伝えることができるのです。
what you haven'tはBに相当し、「あなたがしなかったこと」。
この部分も現在完了形を使うことで、「過去にしなかったことが今も尾を引いている」というイメージを伝えています。
ここでは重複するので、haven'tの後にdoneが省略されています。
意味を補って意訳します。
「後悔といってもいろいろある。『あんなこと、やらなければよかったのに』と、してしまったことを悔やむのも後悔。『あのとき、しておけばよかったのに』と、しなかったことを悔やむのも後悔。どちらも後悔だが、やってみて後悔するほうが、やらなかったことを後悔するよりも、よいのではないだろうか」
迷ったときは実行。
失敗したら、致命的なダメージを負う、命を失うのなら話は別。
でも、そうでなければ迷わず実行。
Paul Arden氏のそんな考えに、私は心から賛同しています。
今日は最終回なので、もうひとつだけエピソードを書きます。
武蔵野大学のキャリアデザインの最終講義に関する話です。
じつは最後に歌を歌いました。
最後に伝えたい想いがある。
言葉だけでは弱い。
だから自作の歌詞に思いを込めて、歌ってみよう。
そう思いました。
けれども、一方で不安もありました。
外してしまったら、どうしよう。
ものすごくイタイ先生として、学生さんたちの記憶に残るだろう。
では、それを恐れて歌わなかったとしたら?
きっと後でものすごく悔やむはずです。
ここでも迷ったら実行を実践。
私はある程度ボイストレーニングを積んでいますし、大勢の前で歌った経験もありますので、まったく自信がないわけではありません。
それでも、ドキドキものでした。
で、結果は?
それは学生さんたち次第ですが、私としては伝えたい知識と気持ちを伝え切ったと思っています。
そして、つい最近、この講座を請け負っている方が来期の契約更新をしないことが判明。
私はその方から講座を委託されていましたので、自動的に私の契約も終了です。
今年1月の講義が、私の最終講義となりました。
毎回これが最後の講義だと思って、学生さんたちの前に立ってきましたので、後悔はありません。
学生さんたちが幸せな人生を歩むために、ほんの少しでも役に立つことができたら、本望です。
たとえ、「ものすごくイタイ先生」として記憶されていたとしても。
このブログを読み続けてくださった読者の皆さん、ありがとうございました。
みなさんの人生や仕事に、ほんの少しでもお役に立てたら光栄です。
最後になりましたが、ここまでお付き合いくださったみなさんへ、ささやかなプレゼント(英語の曲で使われている英語を、エッセイ風に解説したPDFファイルです)をしたいと思います。
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「今日の英文」を、お気に入りの筆記具でノートや手帳に書き写しましょう。
It's better to regret
what you have done
than what you haven't.
それではみなさん、お元気で! また逢う日まで!