高三の次女が「パパが一番好きな本って何?」と聞いて来て読みたいようなことをいうからそれだったら何が良いのかと考えた。
私が好きなものはかなり私の極私的な想いがあっての「面白さ」だからそれを次女に渡すのはちょっと酷かなと思った。
それで本を読むのなら私の好みよりも次女が読みたいものや少しポピュラーなものが良いのではないかと思い勧めたのが連城三紀彦の「恋文」。
次女に勧めながらもまた私も読みたくなって次女が置き忘れた本を手にとって何度目かの再読…。
あらためて読んでみると場面切替の見事さとテンポそして表現の良さ、情緒ある描き方に感嘆する。
一行目から惹き込まれて何度も読んだ筈なのに、些細な物言いにも人の心を描かれていて見事としかいいようがなく、以前は泣く事もなかったのに読みながら涙を止める事が出来ず、嗚咽してしまう…。
生きていてこんな凄い小説を読めるなんて本当に良かったと心から思った。
読み終わったあと次女が置き忘れていた場所に本を戻した。