「野のゆり」1963年 アメリカ映画

これも子供の頃に観た映画。
最近、観る機会があり、なつかしさもありあの「エイメン」という主人公の男性が歌う讃美歌に近い歌、祈りのような歌がもう一度聴きたくて観る。ずっと探していた映画のひとつ。
今回で映画の題名が「野のゆり」であることを知ったかたちです。
アメリカの荒野を走る車がオーバーヒートで止まってしまう。それで仕方なく立ち寄ったところそこの修道女から「神があなたを遣わして下さいました。あなたにお願いしたいことがあります」と言われてしまう。
そこに他の修道女も集まってくる。
男性はたまたま立ち寄っただけだし、旅の途中である目的地まで早く走らないといけない。軽く断って走り始めるも持ち金が残り少ないことを思い出す。仕方ない修道女の所で少し働いて稼ぎそれからまた出掛けるかと思い直し、修道女の所に戻っていく。

修道女たちは東ドイツ(ドイツがまだ分断されていた時代です)オーストリア、ハンガリーとそれぞれから来ている。
つまりはそれぞれの国で信仰を持ち、宣教の為にアメリカ、そしてこの土地に来たということなのだとこれは今回観て分かった。
プロテスタントとしてのアメリカ、15世紀、欧州全土にプロテスタントが制覇していくなかカトリックはそれならばとアジア圏の宣教を目指した時の事を頭をかすめる。その時の国のひとつが日本です。
そして形式的なカトリックの信仰に疑問を持ちイギリスを飛び出して「プリグリムファーザース」たちがアメリカの地に降り立つ。そんな歴史の延長の中、カトリックとプロテスタントが同じ食卓に着く。
今観るとなんとも不思議な感じである。
修道女たちはただ導かれてアメリカの地に来たのだけども言葉も違う、文化も違う。それでも一心に宣教を続けている姿が垣間見られる。
ただ神に対する信仰のみ。

ある時、修道女達が讃美歌を賛美しながら仕事をしている。そこに主人公が来ると「あなたも何か歌って」という。主人公は歌い始める今流行りの曲、歌い始めるもあれ?ちょっと場にそぐわない事に気がつく。そして、歌い始めるのが「エイメン」

軽快なリズムのその歌詞はイエスの誕生の物語り。

この歌詞の意味も今回分かりました。
子供の頃よくこの曲を口ぐさんでいたけど、歌詞までよく分からなかったのです。

修道女たちの質素な生活、そして無垢な笑顔、それらを通じて彼女たちのここまで来た苦労と信仰がこの映画をさらに昇華しているように感じます。

主人公もアメリカの歴史の象徴としてありながらも明るくただ心の思うままに教会を建てようとする。

修道女の信仰の苦悩、焦り、希望、懸命さが垣間見られるたびに胸が痛んだし、そして、その必死さが伝わって来ました。
神を信じ、神が準備してくれた男性を信じていく。何も心揺るがせることなどないのだ自分に言い聞かせる。
修道女と主人公の衝突しながらも念願の教会は出来上がっていく。

野外礼拝に集ったメキシコ人たちやそこに礼拝を司る神父の話しもさらりと描いている。

1963年という年代のアメリカが直面していた背景から生まれた作品でした。

最後、軽快に「エイメン」を歌いながら完成した教会を後に修道女たちにサヨナラも告げずに去っていくラストが心に迫って今回も感動してしまいました。

主人公を演じたのはシドニー・ポワチエ。
黒人としてアメリカで初めてアカデミー主演男優賞を受賞した方です。