「ラヴ」戯曲 作:山田太一

ある家にご主人を訪ねてお客さんが来る。
居間でくつろいでいるところに突然の訪問者…。
挨拶などをして話しをしていくが要領を得ない。
お客さんは仕事関係の人。さらに話すがこちらの様子を伺うような話しづらそうな感じである。

そして「あの時のお話しを」と話し始める…。

少しずつ見えてくるものは、語るには躊躇してしまいしそうな、普段では踏み込めないような、あまり目を向けれない話し…。

話しを聞いていくうちに自分の内面に踏み込むような内容で、ロジックを組み立て行けば、そこに行くこと、そこに踏み込んでいくのことが良いような話しである。
それでも抵抗がある。だから、恐る恐る話しは始まるのであるが…。

日常に確かにそこにあるのにあらためて意識しようとしない、すると途端にその曖昧さに堪えるものがない…。

主人公は飲みの席とはいえ、約束した内容を思い出していく。そして、そこから見つめていくものが顕になっていく。

そして慌ただしい毎日から少し解放されたある日突然それは問われる。

問われながら自問自答し、妻にも問うていく。
そして、道を選びロジックに従って夫も妻も進んで行こうとする。

結末は、夫も妻も同じように手前で断念して家に帰ってくる。
そして、普段意識しない、口に出さないものに対してお互いに意識し、言葉にしてみる。

19歳ぐらいの時に一度だけ観た戯曲。
作品の確かな相互関係も記憶が曖昧です。ただ、戯曲の中で描かれているものは究極的かつ普遍的なものでそこから更に見つめていく過程が危うさを残しながらもその本質を見つめていく。ロジックに流されない、それでもいっこうに見えてこないものに対して少し背伸びをしてのお互いの想いを率直に伝えていく夫婦。
そこからどうなるのか分からない。ただ、人生の終わりかけに見えてくるものに対して新たにお互いに見つめていこうとするものがあり、戯曲は終わるのだけども戯曲の中で2組の夫婦を通じてものの本質を問うていくのは新たに出発していく問いであるように感じました。

戯曲「ラヴ」を思い出したので少し書いてみました。