いつの間にか
風は止んで
タクシーばかりが国道を急いでいる

春物のコートでは少し肌寒く
時折黙って歩く君のことが心配になる

路地を通り過ぎて
溜まりかねて
脱いだコートを肩に掛ける
君は少し驚いてそれでも
しっかりと私のコートを身体に寄せる

言葉をかけるよりも先に
心寄せてしまう

何故3月というのはまだ寒いのだろうか?
などと意味のない問いを
君と一緒に並んで歩く気恥ずかしさから
何度も何度も自分問い掛けていた

彼女のアパートまであと
どれくらい歩けば着くだろうか?

春の夜、風に僕のこころは簡単に
星空に飛ばされてしまう

飛ばされたまま
たどり着く場所も見出せず
夜の彼方に消えていく