SDGs応用課題:気候変動について改めて考える

 

気候変動の対策は、地球温暖化対策が主である。近年、科学者のあいだで、温暖化をめぐる言説に関して見直しを求める声が増加しつつある。ここで改めて、地球温暖化をめぐる複数の視点や見解について振り返ってみよう。

 

■地球温暖化賛成派と反対派の各論点

https://www.conserve-energy-future.com/is-global-warming-real.php

☞ 地球温暖化をめぐっては、以下のような対立した論点が存在している。自分にとって特に興味深いと思われる論点はどれだろうか。また、両陣営の論点を比較して、どのような議論や検証が必要となるかを考えてみよう。

 

地球温暖化が事実であると主張する5つの論点

地球温暖化が事実であると主張する科学者は、その根拠のほとんどを、大気や海洋の気体レベルの変化の解釈に基礎づけている。実際の気温上昇を記録することができると彼らは言うが、主な根拠は、気温上昇の前に来るもの、つまり、大気中の気体が環境に及ぼす変化と影響を検出することから導き出される。

 

論点1:海水面の上昇

論点2:地球の平均気温の上昇

論点3:海水温の上昇

論点4:氷河の減少

論点5:海洋酸性化

 

地球温暖化が事実でないことを主張する5つの論点

多くの科学者が、地球温暖化が事実でないことを強く主張している。彼らはしばしば、地球温暖化の存在を主張する人々と同じ事象に目を向けるが、そこから異なる結論を導き出している。さらに、他の議論では考慮されない事象にも目を向けている。これらの科学者は、地球温暖化を大気の温度上昇と厳密に定義し、大気の前兆をもって有効な証拠とみなすことはしていない。

 

論点1:1997年以降、顕著かつ長期的な気温の変化はない。

論点2:過去のデータが十分でない。

論点3:北極の氷が2012年に50%増加した。

論点4:使用された気候モデルは信頼できないことが証明されている。

論点5:温暖化の影響に関する初期の予測は誤りであることが証明されている。

 

■BBCドキュメンタリー

https://www.youtube.com/watch?v=aj65lVohB_c

☞ 冒頭6分を鑑賞して趣旨を推測してみよう。

 

■科学誌掲載論文

Science誌に掲載されたHasselmann(1997)論文“Are we seeing global warming?”(我々は地球温暖化を目にしているのか)に、「前世紀以来、地球の平均気温が0.5度(摂氏)上昇したことが、人為的な地球温暖化によるものか、それとも自然の気候変動によるものか、研究者はまだ決定的な証明をしていない」との記述がある。

Hasselmann, K. "Are we seeing global warming?" Science, vol. 276, no. 5314, 9 May 1997, pp. 914+.

 

また、Geoscience Canada誌掲載のPaterson(2011)論文“Global Warming: A Critique of the Anthropogenic Model and its Consequences”(地球温暖化:人為モデルとその影響についての批判的検証)には、以下の記述がある。

 

増加傾向を示す科学者たちによる反論の主張が、人為的温暖化仮説を支持するものよりも一般に優れた実証データに裏付けられている…。これらの主張では、太陽放射照度と海洋大気の相互作用の効果が引き合いに出されているが、これらの現象はいずれも、CO2に関して主張されているのと比較して少なくとも同程度の温暖化効果がみられ、いずれの現象も健全で十分に理解された科学理論に依拠していることが示されている。さらに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等で使用される地球温暖化モデルは一部不正確で現在の気温統計に逆行することが示されるケースもある。こうしたことから、CO2による人為的温暖化仮説は実証的なエビデンスに乏しく疑問の余地が残ると見る向きも多い。

Paterson N.R. (2011). “Global Warming: A Critique of the Anthropogenic Model and its Consequences”. Geoscience Canada, Volume 38, Number 1, January 2011.

 

☞ 政治やメディアにおける主流言説と、科学の世界における(少数派を含む)言説とのあいだに乖離が存在するとした場合、それはどのような経緯によると考えられるだろうか。また、そのギャップに対して、どのような対処の仕方が考えられるだろうか。

 

■スティーブン・E・クーニンによる最近の著作(原著2021年;日本語版2022年)

 

スティーブン・E・クーニン(1951年12月12日生まれ):アメリカの理論物理学者。ニューヨーク大学都市科学進歩センター前所長。ニューヨーク大学タンドン工学部土木都市工学科教授。2004年から2009年まで、BP社チーフサイエンティストとして勤務。 2009年から2011年まで、オバマ政権下エネルギー省科学担当次官。(ウィキペディア参照)

 

Unsettled: What Climate Science Tells Us, What It Doesn’t, and Why It Matters (2021)

https://www.amazon.co.jp/Unsettled-Climate-Science-Tells-Doesn%C2%92t/dp/1950665798/ref=sr_1_1?qid=1661398256&refinements=p_27%3ASteven+E.Koonin&s=books&sr=1-1

 

☞ 以下は、日本語版『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』出版にあたり著者クーニンから寄せられた言葉。これを読んで、地球温暖化をめぐる様々な取り組みに関して、どのような課題が残されているか想像してみよう。また、今後どのように対処していくことが求められるか/可能かを、自由にディスカッションしてみよう。

 

「私がこの本を書いたのは、気候科学やエネルギーに関する重要な情報が歪められているからだ。純然たるデータや科学文献の記述が、政府による評価報告書、マスコミを経由して、一般市民や意思決定者へ伝えられる過程でねじ曲げられてしまう。私が望んだとおり、専門家でない読者の方々は、(米国での出版後)本書の内容が公正でわかりやすいと評価してくれた。他方、予想したとおり、一部の気候科学者は本書を批判し、私の動機や資質に疑問を投げかけた。だが、内容面の大きな誤りを見つけることはできなかった」

(「日本語版発行に寄せて」より)

 

■『世界気候宣言(World Climate Declaration)』

(世界気候インテルグループ[CLINTEL]2022年9月15日公開)https://clintel.org/world-climate-declaration/

 

☞ 上記リンクのサイト上で公開されているWorld Climate Declarationの内容を読んで、自分が共感できる論点、違和感を覚える論点について考えてみよう。それぞれどのような理由でそう感じるか。今後、それらの論点について、どのように対処していくことが可能か考えてみよう。