【注目点】INGは、「何かをしている」を基本として、そこから、「何かをしている状態にある」という(同時)進行的な状況を描写する用法と、「何かをしている(する)こと」という行為を名詞概念化した用法へと展開する(佐藤・田中, 2009) 。留意すべき点は、動名詞か現在分詞かという用語に基づく分類に気を取られるあまり、意味的な側面を軽視してはならないということである。INGの意味が実感できれば、用語の分類自体は必須ではない。ここでは、INGの分析が興味深い例として、まず、Raindrops Keep Falling On My Headを取り上げてみたい。
Raindrops Keep Fallling On My Head
(Hal David and Burt Bacharach,1969)
1969年の映画Butch Cassidy and the Sundance Kid(邦題『明日に向かって撃て!』)で使われて以来、何度もカバーされており、音楽的にはとても身近な歌だろう。Raindrops keep falling on my head / And just like the guy whose feet are too big for his bed / Nothing seems to fit / Those raindrops are falling on my head, they keep fallingという冒頭の部分で、2つ面白い点にふれたい。
まず、just like〜は、「足が大きすぎてベッドに収まらない」という誇張表現で、物事がうまく収まらない様子(Nothing seems to fit)を表している。そうと分かると、Raindrops keep falling on my headという最初の1行(歌のタイトル)も、人生に次々と降りかかる苦境のメタファーとして再解釈を迫られるようになる。これらの比喩表現が第一のポイントである。
今ひとつの注目点は、keep+INGである。歌詞を文字で見ると、Raindrops KEEP falling on my headとなっているのだが、実際にB.J. Thomasの歌に耳を傾けてみると、Raindrops ARE falling on my headと歌っていることもあるようである。引用した歌詞でも、Those raindrops ARE falling on my head(現在・進行形)をはさんで、再びthey KEEP fallingと繰り返している。
きっとこれは、keep fallingもare fallingと似て、「雨が(実際に)降り続いている」状況を表すという捉え方がなされているということを示しているのではないだろうか。BE+INGの進行形とつながっているのであれば、一般に言われるように、“keep+ING”のINGを「動名詞」と断定するのは無理がある。実際のINGの用法にふれたとき、用語で機械的に分類しようとするのではなく、「何かをしている」というINGのイメージをつかむことが大切な所以である。
Reference:『レキシカル・グラマーへの招待ー新しい教育英文法の可能性ー』(開拓社, 2009)