「ダイエットしなくちゃ」と普段、何気なく使うこの「ダイエット」という言葉。
日本では「食事制限」の意味で使われることが多い単語です。
英語ではダイエットはdietと書きます。
では、a healthy dietだったらどういう意味?
the British dietだったら、「イギリス人のダイエット???」
「健康的なダイエット」ならわかる気がしますが、「イギリス人のダイエット」なんて意味不明ですよね。
そう、日本語の「ダイエット」にない意味が英語にはあるのです。
dietはもともと、ギリシャ語diataが語源で、「生活様式」のことを意味していました。
それがいくつかの過程を経て、「(毎日の)食事」のことを意味するようになりました。
a healthy dietは「健康的な食事」という意味ですね。
では、なぜ、「ダイエット」の意味が生まれたのでしょうか?
これには意味変化の1つの特徴として、「意味の特殊化」(the specialization of meaning)という現象で説明できます。
意味変化の特徴として、意味の特殊化は非常に用例が多いのです。
たとえば、日本語では、「花見に行く」というときに連想する「花」は「桜」ですよね。
「飲みにいく」というときの「飲む」は「お酒を飲む」ことであって、ジュースとかお茶とかを飲むわけではないですよね。
英語でも、deerはもともと〈動物〉を意味していました。が、今は〈鹿〉という動物しか指しません。
meatも〈食物〉という意味でしたが、〈肉〉だけの意味で用いられています。
dietも同じように〈食事〉という意味だったものが特殊な食事形態である〈(健康・減量のために)制限された食事〉も意味するようになりました。
I'm on a diet.であれば「ダイエット中」、I'll go on a diet.「ダイエットするつもり」ということですね。
この意味の特殊化はシネクドキーによる意味変化と考えられます。
ちなみに、the Dietと大文字で書くと「国会」という意味になります。
実はこれもギリシャ語diaitaに由来します。
これがラテン語に入ってdies、つまり英語のdayを表す語になり、のちにday's work(一日の仕事)に意味が特殊化し、さらにそこから、「一日かかる仕事→会議→国会」のように意味が変化していきました。
こうして見ていくと意味変化にも傾向性があることがわかり、丸暗記だった単語学習も「理解」を伴って学習できることに気づくはずです。