もうすっかり、季節は冬になってしまいました。
早いものですね。
ちょっと前までは秋の紅葉がきれいな季節でした。
美しい瞬間っていうのは一瞬なんですね。
そんな「はかなさ」が日本人が持つ「わび、さび」といった感性と結びついているんだと思います。
今日は「秋」を表すfallという単語について考えてみましょう。
fallはColored leaves were falling.のように動詞としても使えますよね。
このときのfallの意味は何でしょう?
そう、「落ちる」という意味ですよね?
中学校のとき、何で「秋」って意味と、「落ちる」って意味が2つあるんだろう?と疑問に思ったことがあります。
さらに、Niagara Fallsの意味は?
そう、「ナイアガラの滝」のことですよね!
1つの語にいろんな意味があって大変だなーって思った人も多いでしょう。
では、辞書を引いてみましょう。
辞書を見ると同じfallの語義のなかに「落ちる」も、「滝」も、「秋」もあることがわかります。
ということは、何らかの意味の関連性があるということになりますね。
そこで、fallの意味変化について考えていきます。
fallはOE(Old English)というかなり昔の時代からあった英単語です。
もともとの意味は「落ちる」という意味でした。
それが、1545年に「秋」という意味で初出例があり、その後、意味として定着します。
また、1579年には「滝」という意味で初出例があります。これも定着しますね。
つまり、意味の展開をまとめると、以下のようになります。
fall 〈落ちる〉 →〈木の葉が落ちる〉(メトニミー)→〈木の葉が落ちる季節〉(fall of leaves; シネクドキー):秋
→〈河川が落ちる〉(シネクドキー):滝
〈落ちる〉という現象は色々なものが落ちる可能性がありますよね。
〈落ちる〉:{葉っぱ、岩、水、ペン、ハンカチ、木・・・}
そのなかから、Leaves color in fall.となれば、このfallは〈葉っぱが落ちる(時期)〉に限定されることになり、「秋」という意味に展開しますし、Iguasu Fallsとなれば、〈イグアス川の水が落ちる〉というように何が〈落ちる〉かが限定され、「滝」という意味に展開します。
人間の認知の働きとして、類似しているものをなるべく最少言語で表象するという働きがあります。
全部違った言葉で表していたら、単語が無限に増えていって、人間の頭脳では処理しきれない。
そうしたことから、生み出された人間の知恵が比喩であり、言語の多義性につながっているのです。
日本語では「落下」という単語に「秋」や「滝」という意味はありません。
一方で、英語では「fall」という単語に「秋」や「滝」という意味を持たせた。
言語によっても意味の処理の仕方が違う、というのは面白いですね。