【読書感想文】カンプノウの灯火 メッシになれなかった少年たち | みつぼしをこえてーglory for the fourth star

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サンフレッチェのことをうだうだと。広島のグアルディオラ(確信)森保一と紫の戦士たちの歩みとともに。




良すぎる本に出会ってしまったので感想文をしたためます。良すぎた。



カンプノウの灯火 メッシになれなかった少年たち/洋泉社
¥1,620
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リオネル・メッシがスカウトされたバルサの下部組織の、そのチームには「メッシ以上の」少年達がいた。彼らは今どこにいて何をしているのか―


メッシとともにピッチに立ち、青春時代を過ごした少年たちの、「メッシになれなかった」後の人生を追ったノンフィクション。下部組織時代の野望と栄光、のちに訪れた挫折。そして世界不況、移民、宗教、独立問題…困難な現実を生きている”元バルサ”の青年達。ボクシングトレーナー、精肉店、飼育員、営業マン、警察官…様々な職業で彼らの人生を生きていた。


そんな深刻なテーマもユーモアを交えた軽妙な口調で語られているのは、成功者ではなくとも取材した元選手たちの心の中にはバルサという”灯火”があると感じたからなのかもしれない。その灯火は、育成組織とトップとを哲学で貫く現在の「バルサ」を形作ったヨハン・クライフによって生まれ、「バルサだけが人生ではないこと」を説く当時の監督と寮長によって渡されてきたものであることが、彼らの言葉を記した章が別に設けられてあることによって読み取ることができる。


「何かを信じることは、サッカーにおいても、人生においても欠かせないことなのです」


今では別の世界で生きていても、あのとき、確かに”メッシ”を目指し、メッシと人生を交差させた男たちは、今もスペインの地で自分の人生を生きている。







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書店のアオリかよという文章になってしまいました。軸は成功者の裏に…という定番のものでしょうが、陳腐なテーマに甘んじないサブテーマが、それぞれの章に組み込まれています。現代のスペインに巣くう病巣、とでもいうべき困難な現実についてです。


第1章では移民、第2章では鬱病、第3章ではイスラム教と過激派、第5章ではカタルーニャ独立問題…社会的な困難に対して彼らがどのようにして向き合い、あるいは捉えているのか。


これらの「重い話」が街の風景、それぞれの青年たちのささやかな営みと同じように落ち着いたトーンで語られており、フルーツジュースのようなさらりとしながら実はいろいろ入ってるんだよという読後感を持たせています。


まあ、本当のところは大仰な”社会問題”は避けられないけども、メインに据えるほどでもない、ということなのかもしれません。


いずれにせよ、夢をかなえた人も、かなえられなかった人も、自分の人生は自分で生きるしかないということ。その方法を教わることが思春期の必修科目なのでしょうし、教えることが思春期を通り過ぎた者たちの義務なのでしょうね。