若い頃。
ボクの職場の所属長は、お酒を飲むと必ずこの曲を歌ってくれた。
「骨まで愛して」。
名曲だ。
と言っても、若い方は知らないだろうなぁ。
 
 
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「骨まで愛して」。
見事だね。それ以上の愛し方、思いつかないもん。
だって、骨まで愛するんだよ。骨まで。
あなたは今、隣にいる人の骨まで愛していますか。
 
ところでこの所属長。
くだけた宴会の時も、お堅い宴会の時も。必ず、酔っぱらうとこの曲を歌い始めた。
厳粛で、グラスの音が「カチカチ」って響き、それ以外話し声もまばらな宴会。
辺りを、緊張という空気が舞い、畏敬という塵(ちり)が漂う空間。
ナイフで、ビシッと切れそうな。そんな雰囲気の中で、いきなり。
彼の声が響き渡る。
「骨まで骨まで骨まで愛して欲しいぃぃぃのぉぉぉよぉぉぉ♪」、
ボクは、宴会場の中で歌声がこだまするのを初めて経験した。
そしてそのこだまが響き渡ると、皆が笑顔になった。
重い空気は一気に取り払われ、皆が優しい気持ちに戻ることができた。
そう。
彼は、本当に誰からも愛される人物だったのだ。
学もあった。俳句の世界では、名の知れた人物だった。
ボクにとって、まさに尊敬できる上司だった。
元気かな。って、思っていたら最近、自転車をこいでいる彼を発見。
その自転車をこぐ速度たるやすさまじく速い。
結果、声をかけられずに、見失ってしまった我が元上司。
でも、元気でよかった。
骨になってなくてよかった。
今でも、あなたのことをボクは骨まで愛していますと伝えたかった。
最後に一句。
 
骨にまで こげる自転車 恋こがれ  
GIN作 お見事!!