二人で会社を作らないか。
サルに似たNか村クンがボクにそう言ってきたのは、20代後半。
バブル絶頂の時だった。
「えっ?」。
戸惑った。だってNか村クンは大きな会社に勤めていたし。
ボクはボクで、仕事を持っていたから。
「どんな会社を作るんだい?」。
ボクの素朴な問いかけに、サルに似たNか村クンは一瞬口をモゴモゴってした。
「うんっ?お前まさか・・・」
脱法・違法な業務を手がける会社でも作ろうというのか・・・。
というようなサルに似たNか村クンに対する疑念はすぐに消えた。
彼のモゴモゴ、実は何をするか考えていないということだった。
サルに似たNか村クンは、中学生の頃から無計画な男だった。彼の座右の銘、それは。
「行動あるところにのみ、意志は存在する」ということだった。
ただ・・・、彼の場合。行動に目的が伴わないところが痛かった。その時もそうだった。
ボクは、サルに似たNか村クンにごめんねって謝った。
だってボクは、仕事を持っているから。二人の会社に加わることが出来ないんだよ。
それに、株式会社を作るとなると。商号や事業目的や本店所在地や発起人を決めないとならないみたいだよ。ボクがそういうと彼はため息をついた。
「そうか。やっぱり何をやるか決めなければならないのか」。
Nか村クン。
なんとその数週間後、会社に辞表を出した。
彼は本気で起業を考えていたのだ。ただし、何をするのかはナゾとベールに包まれていた。
ボクは仕事を続け、Nか村クンは起業した後、本当に経営者になってしまった。
そして彼は今、ちゃんと人を雇って仕事をしている。
まさに、行動あるところにのみ意志は存在する。
Nか村クンに天晴れをあげたい。