基本内勤のボクの職場ではあるけれど。30歳を過ぎた頃一度。
2年間だけ、職場を離れる状況が発生した。
内地留学。大学院に2年間、通うことになったのだ。



それまでボクを取り巻く周囲の人々との連絡方法は、固定電話。
会社の電話を使うわけだから、まったく問題がなかった。
でも、大学院に通うようになって通信方法を失った。
「GINは何をしている」。
関係諸機関から苦情を受けた。いったいGINはどこにいるのだ。
そんな状況が毎日続いた。
そして・・・。会社の人から無理やり買わされたのが「ピッチ」だった。
「GINクン、ピッチを買いなさい」。職務命令だった。
ボクは駅の近くの携帯電話屋さんに行って、ピッチを買った。
「たまピッチ」だった。
たまピッチは、ピッチなのに。タマゴッチ機能が付いていた。
電話をかけられるだけでなく、タマゴッチが育てられる。
ありがたいと思った。学生になったボクは授業中、タマゴッチに餌を与えられるし。
可愛がれるし、便所の掃除もしてあげられる。しかも頻繁に。
ボクがたまピッチを買うと、姉も同じものを買うと言いだした。
たまピッチ姉弟。なんと二人でタマゴッチを育てると、互いのタマゴッチが互いのピッチに遊びに行けるのだ。
ありがたかった。
これでまた、退屈な学生生活に潤いを持たせることが出来る。
その後。
姉のタマゴッチは毎日のようにボクのたまピッチに遊びに来るようになった。
一番感激したのは、ボクのタマゴッチが死んだ時、姉のタマゴッチがお線香をあげに来てくれたことだ。
ありがたいと思った。
たまピッチは繋がっている。
新しい時代の繋がりは、通信な繋がりなのだ。
デジタル社会のスタート。
あの頃、ぼくはちょっとだけそれを体感した。

そしてあの頃。僕の生きるギョーカイの雑誌社から執筆依頼を受けるようになった。
パソコンを使って、原稿をバチバチ書くようになったのもあの頃だった。



iPhoneからの投稿