出席票、コピー防止のための新たなる手段。
それは、色上質紙への印刷だった。
教授はその後、毎回違う色の出席票を渡すようになった。赤青黄色・・・。
ボクらの負けだった。
経済学概説。
賃金の本質は、労働力の価値・価格という授業だった。
ボクらが注ぎ込んだ代返における労働力は最終的に、価値・価格としての評価を得ずに終了。
学生たちは、この授業だけはアルバイトを諦めて出席するようになった。
いろんな教授がいた。
出席を最初にとってしまう教授の授業は、途中退席する学生が後をたたなかった。
ひたすら退屈な授業もあった。
抑揚がなく、平坦な語り口調で経済史を話し続ける教授の授業は、拷問に近かった。
そのうち、皆が寝た。
普く皆ねた。
ただ・・・、そんな中にもひたすら寝ずに頑張ってノートを取り続ける女の子もいた。
彼女のノートの価値は、ボクらアルバイト学生の労働力よりもずっとずっと高かった。
モラトリアム。
そんな中で、ボクらは自分の将来をちょっとずつ模索していった。
ボクは、教養課程の授業以外に、図書館司書の資格や博物館学芸員の資格が取れる教科も履修した。
そして、教職課程も選択。その結果、月曜日から土曜日まで授業が満タンになった。
たまに教授がお休みで休講になると、大学の近辺の喫茶店でコーヒーを飲んだ。
コーヒーを飲みながら、インベーダーとUFOを倒し続けた。
時間は、とてもゆっくりと過ぎていった。
仲のいい女の子に誘われて、映画を見たり。ボウリングをしたりして、午後の休講で空白になった時間をやり過ごす。そんな時もあった。彼女もまた、モラトリアムな時間の中で。
何かを探し続けていた。
10代は、そんな時代だった・・・。