「お洒落をしなさい。」


学生時代。

母がボクに語りかけた、言葉の横にいつもいた人物。

それは白洲次郎さんだった。

母は、彼に憧れていた。

戦後の日本を政治家や官僚として動かしたわけではないけど。


若林で見た空


日本人として清清しく生きる彼の姿に母は、武士を感じていたようだ。

武士道。

それは、日本武士が貫いた教え。

どこにも書かれていないけど、皆がきちんと守った不文律。

「武士は食わねど高楊枝。」

贅沢な暮らしなどいらない。

気に入ったものを、大切に大切に守り続ける。そんなお洒落な生き方をしなさいと母はよく言った。


成人式。

ボクはツイードのスーツを仕立ててもらった。

白洲次郎さんも好んで着たツイードのスーツ。

母はそれを大切に着続けなさいと言った。

「数年着たら、味がでる。」

それが、母が言うダンディズムだった。

若いボクも、ほんの少しわかりかけていた。

ヨーロピアンやサーファーな服に袖を通して、毎日流行のお店に出かけても。

それだけでは、お洒落をしたことにはならない。

大切なのは、着続けること。そして、その服に愛着を持つことが、自分の人生を豊かにするということだ。

それは決して自分の人生に手垢をつけろということじゃない。

タブラ・ラサ(白紙)な中から。

ボクらは、いろんな経験を通して、自分の人生に「味」を出していくのだ。

母が言う「お洒落をしなさい。」の言葉には、そんな意味が込められたいた。


白洲次郎さんとともに。

母が人生をかけて愛した人物がいる。

小説家「井上靖」さんだ。

いつの日か。ボクは井上靖さんのお話をブログに書こうと思ってる。

心にグググっと余裕ができた時に。

ゆっくりと、大切に書きたいって思っている。