BGM:ケンとメリー 愛と風のように BUZZ

http://www.youtube.com/watch?v=Eunqtuc7i-8


ボクが大学に入って。

真っ先に困ったのが、着ていく服だった。

高校時代は制服だったから、着る服について何も考えず、毎朝それに袖を通せばよかった。

けど・・・、大学に入ったら制服がなかった。

毎日、好きな服を着ていかなければならない。それが、面倒だった。

何しろ、ボクら多くの男子は、中学1年生から高校3年生まで、ずっとずっと同じ詰襟を着て過ごしていたから。

いきなり4月から自由な服にしろと言われても、ひどく戸惑った。


若林で見た空


実家の母は、ボクが東京に出て行くとき、これを着なさいって何着か服を渡してくれた。

でも、豊富なバリエーションがそこにあったわけではなかった。

詰襟とは違い、毎日同じ服を着ていくのはさすがにマズイとわかっていても、日々着替えるほど、大量の服を持っていたわけじゃなかったから。つまり困った。

服がたんない。

「う~む・・・、これからは自分で服を購入しなくてはイケナイな・・・。」

高校時代までは、考えもしなかったことにまで、考えが及ぶようになった。

さて。

服はどこで買えばいいのだろう。

若林商店街で売っているのかな。

ボクにとって、服を買うという行為はその程度だった。

で、実家に連絡を入れた。

「あの・・。服を買おうと思います。」

すると、母は早速ボクの銀行口座にお金をドバっと送ってくれた。

「GINクン。服はちゃんとしたものを、ちゃんとした所で買いなさい。お金が足りないようだったら言いなさい。また送ります。」

口座に振り込まれたお金の額にビックリして、母にお礼の電話を入れると、母はこう続けた。

「普段着る服装も、きちんとしなさい。男の人として、当然のことです。」

ボクは、いただいたお金を持って、服を買いに出かけた・・・。