BGM:風の中のスバル

http://www.youtube.com/watch?v=rnpDZvopQyE


高度経済成長期。

マイカーブームという言葉が流行した。

それまで、バスや電車での移動を当たり前としていた日本人が、自ら車を所有し、日曜日ともなれば好きな場所にドライブに出かけるようになった。

1970年代後半。

マイカーブームは定着へと変化した。車とクーラーとカラーテレビは、いつの日か家庭における必需品となった。

ただそれは、まだまだ大人の世界の話だった。

学生が車を所有するなどということは、夢の世界のお話。

そんな中、マイカーを手に入れ、ドライブに出かけようと夢見る一人の男(学生)がいた。

男の名は、熊本県玉名クン。人々がインアクセシブルと名づ

けた未踏の大陸接岸に、彼は挑み続けた。

これはかつて、若林の下宿の住民がただ一度。

夢を叶えるためにひとつになった物語である。


若林で見た空


(・・・本編・・・)


「ボクは車を買おうと思う。」

熊本県玉名クンはある日、下宿仲間のボクらにそう言った。

それは。突然の自家用車購入宣言だった。

車を買おうと思う。

熊本県玉名クンのその突発的発言には、なにかしら強い意思が感じられた。

たとえるならそれは。

リンドバーグが大西洋を横断しようと決意した時のように。

彼の発言は決然としていた。そして。

ボクら下宿仲間は、その提案に対し、「うんうん」と、頷くしかなかった。