中学生の頃。

中間テストや定期テストが返って来ると。

み~んな、点数のところを折ってかくした。

いや。正確に言うと、「ほとんどの人」が点数の部分を折ってかくしていた。

ところが。


若林で見た空


威風堂々と。

決してテストの点を隠さない人もいた。

点数のところを折ることもなく、その点数を級友と雨風と雨露に晒し。

ひたすら、先生の説明を聞く男がいた。

Oクンである。彼の解答用紙は、多くの○で覆われていた。

学級委員長。勉強は抜群。顔もアントニオ猪木にそっくりなイケメンだった。

小学生の頃、とてもヒドイテスト結果を繰り返していたボクも。

ほとんどのテストを綺麗に折って、ランドセルの奥底に隠し続けていたボクも。

中2くらいになるとテスト点・・・、人並みになっていた。

いや・・・。「GINちゃん、勉強教えて。」なんて、時々は言われるくらい、進化を遂げていた。

でも。Oクンにはテスト点。なかなかかなわなかった。

彼の点数合計は、例えば満点が250点だとすると、限りなく250点だった。

ケアレスミスなし。全てにおいて満点。顔はアントニオ猪木。

完璧だった。


テストの点数のところを折らずに、中学校3年間を過ごしたOクンは今。

九州の大学で学生たちに勉強を教えている。すごかですたい。

そして、点数のところを折ってかくしていたGINは静岡で。

元気に毎日を暮らしている。すごかですたい。

みんな大人になったね。あの頃テストの点数を折って隠しあった。

照れや、羞恥や、プライドや、苦笑いを抱いた若者たちも今や、相当なことでなければ、たじろがずに生きられる年齢になった。

そう、このトシになって我々は、ようやくOクンに追いついたのだ。そして・・・。

久しぶりに会いたいね、Oクン。

ボクも一時期、君と同じ仕事を目指していたんだよ。

いや、今でも。目指している。