ちっちゃい頃。

遠隔操作で動く車のおもちゃを買ってもらった。

操作盤で、前後左右に進む方向を変えられるのだ。

ボクの宝物だった。一日中、家の中でそれを動かした。

卓袱台にぶつけ、たんすにぶつけ、母親の足にぶつけ、ボクは、そのおもちゃで遊び続けた。

ただしそのおもちゃ、遠隔操作はできたけど、有線だった。

車と操作盤は、線で結ばれていた。


若林で見た空


その後。

小学校に入ってしばらくして、ボクはラジコンなるものを知る。

線が繋がっていなくても、遠隔操作できる。そんなおもちゃをおもちゃ屋さんで発見したのだ。

爆発的に欲しいと思った。

どんなことでも我慢するから買っていただきたいと思った。

夏休み。スイカを一回も食べなくてもいいから。

学校から帰ってきたら、すぐに宿題をはじめるから。

ラーメンのシナチクを父ちゃんに全て分けてあげるから。

ラジコンカーを買っていただきたい。そう思った。

母にせがんだ。「ラジコンカー、買ってください。」

母は、すぐにうんとは言わなかった。「こないだ、地球ゴマ買ってあげたばかりでしょ」。

う~む、「こないだ」のことを持ち出して、ラジコンカー購入を阻止しようしているな。

やっかいだ。

でも、そんな母親の言い訳なんか、子どもが聞くはずがない。

「地球ゴマは父ちゃんにあげるから、ラジコンカー買って下さい。」

懇願する。すると母も黙っていない。

「あんた地球ゴマ買ってもらうとき、父ちゃんにギン球鉄砲あげてたじゃない。父ちゃんはこんなもの、いらないって困ってたよ。」

「・・・。」

そんな調子で結局、ボクはラジコンカーを買ってもらえずに終わった。

その後、ボクの欲しいものは転転とする。

モデルガンワルサPPKから、天体望遠鏡へ、そして次はラジオへと・・・。

次から次へと欲しいものが変化した。

そして。ボクのおもちゃ購入希望に対する、現実的に購入していただいたものの割合について言うと、それはかなり低かった。

子どもが欲しがるおもちゃとしては、高価なものが多すぎたことが理由であろうと思われる。


ところで。

ラジコンとリモコンはどう違うのだろうか。

テレビやエアコンの遠隔操作機器は、ラジコンというのだろうか。リモコンというのだろうか。

ナゾだ。