「学生街の喫茶店」。

この曲を聴いて、ボクはギターを弾けるようになりたいって思うようになった。

ギターを弾いて、ガロになりたいって思った。

ガロになって、人気を爆発させたいって思った。


若林で見た空


ボクの家には古いギターがあった。父親のものだ。

父母の部屋に、ほこりをかぶって置かれたギター。

「お~、ボクの人気の爆発の素(もと)がこんなところにあるではないか。」

ボクはその場で父のギターを抱えて、ジャラランと弦を弾いてみた。

すると、不気味な音が鳴り響いた。

西洋の古いお化け屋敷の入り口に立った時に、空から聞こえてくるような。

そんな不気味な音色だった。

それでも、憧れのギター。

ボクは父親にせがんだ。

「あの、古いお化け屋敷の入り口に立った時に、空から聞こえてくるような恐ろしい音の出るギターをボクに下さい。」

父親は、即答した。

「弦を買ってきて、張り替えてあげるから待ちなさい。」

う~む。楽しみだ。

これでボクは、人気が大爆発するに違いない。

妄想は膨らんだ。

ボクが、「学生街の喫茶店」をジャッジャッジャッジャーンって弾くと、キレイなお姉さんが、絶叫する。

「キャー、GINさん。ステキ。」

中には、熱狂のあまり気絶して倒れるお姉さんも出てくるかもしれない。

気絶して、泡を吹いて倒れるお姉さんが相次いで出没したらどうしよう。

そのためには、そこにドクターも用意した方がいいな・・・。

こうしてギターの夢は、果てしなく、水平線の彼方にまで広がった。

翌日。

父親は、早速ギターの弦を買ってきてくれた。