BGM 悲しい色やね

http://www.youtube.com/watch?v=xQeEOoKhIqg


東名高速に乗ったボクと彼女とAお島クン。

静岡を目指していたのだけど。

「せっかくだから、ちょっと遠回りしてでも、ドライブして行こう。」ということになった。

行き先は、静波。大学時代毎年泳ぎに行った海水浴場だ。

初心者マークをつけたトラックでのドライブ。

それだって、若い頃は恥ずかしくなかった。

ラジオをつけると、演歌が流れた。

Aお島クンが、それを鼻歌で歌った。

ボクらもそれに合わせて、合いの手を入れた。

学生の頃。よくみんなでお酒を飲んだ。その頃のボクらに、戻っていた。


若林で見た空


吉田インターを下りて、しばらく行くと、静波に着いた。

まだまだ寒いけど、波乗りをしている人たちがいた。

ボクらは、トラックから下りて、砂浜にでた。

海の匂いがツーンとした。気持ちよかった。

風が吹く。3月の風はまだまだ冷たかったけど、それは真冬の風とは明らかに違った。

春の訪れを感じさせる、優しさがそこには感じられた。


波がザーンと音を立てながら、寄せてはつぶれる。

その波に上手に乗るサーファーの人たちが、眩しかった。

これからボクらは3人、新しい社会に出る。

その社会という波に、ちゃんと乗っていけるのだろうか。不安だった。

Aおちゃんと彼女は東京の企業に。

ボクは静岡の旅行会社に4月から進む。

一人ぼっちで歩いていくのは苦しいけど、もう歩き出さなければならない季節がボクらにやってきていた。

モラトリアムな時間は終了したのだ。

Aお島クンが、写真を撮ろうって言った。

「いいね。」ボクがそう答えた。

先ず、彼女と二人で並び、笑顔で写真に収まった。そして、セルフタイマーにして3人で。

朝と同じく。青空を指差して、顔を上に向け、もう一枚の写真を撮った。

もしかしたら。

これが彼女と写る、最後の写真になるのかもしれない・・・。

ボクはそう思っていた。そして、彼女もきっとそう感じていたに違いなかった。


しばらくして。ボクらは、初心者マークが貼られたトラックに乗り込んだ。

静岡のボクの家に向かうために。

ラジオからは。

「悲しい色やね」が流れていた。