魚屋さんを実に細々と営んでいた我が叔父から聞いた話をそのまま信じるとだけど、昔はマグロのトロの部分はあまり食べられなかったそうだ。

「トロは、なんだか筋ばっていてイヤだ。」という人。けっこういたそうだ。

だから・・・、マグロの刺身と言えば、一般的に赤身が主流派で、トロは下手をすると売られず、廃棄していたなんて話まで聞く。

トロ派のボクとしては、なんとももったいないお話だ。


若林で見た空


ところで、寿司屋に行って、トロとアワビを注文するのに、心的プレッシャーを感じない人がいる。

ボクにはそれが、にわかに理解できない。

大トロやアワビは、下手をすると時価という扱いを受けており、それはキリスト教徒におけるエルサレムに匹敵する聖域状態のはずだ。

その聖域に、何事も無い顔をしてズカズカ踏み込んで行く我が飲み友達を見るにつけ、この人はきっとクレルモン公会議で十字軍を派遣したウルバーヌ二世のような人なのだろうなって思っていると・・・。

なんとその人は、次にサラダ巻きを頼んじゃったりする。

あ~、いきなり庶民派。

人間は複雑な生き物なのだ。


ボクの夢。

それは、昭和レトロ館を建てることだ。

昭和のよき思い出を詰め込んだ昭和レトロ館。

それはきっと、ボクらの人生に於いて必ずや必要なものではない。

人によっては、ポイって捨ててしまいそうな、昔で言う「トロ」の部分みたいなものなのである。

でも・・・。

かつて売られず捨てられていたトロも、今では上トロになったように。

ボクのレトロ館も、将来はエルサレムのような聖域に成長する可能性だってないわけではない。

そう信じて。

ボクは、夢を追いかけようと思っている。

絶対零度。

人生黄昏世代にさしかかったGINクンも、ちゃんと夢を今、追いかけている。