シーン4 帰りたいのに上司とデスコ

BGM 思い過ごしも恋のうち

http://www.youtube.com/watch?v=EKTu2ZUdYP8


土曜日の夕方。

さぁて、今日は「若者だけで集まって、愉快に酒を飲もうじゃないか」とウキウキ気分のその時間。

営業所長Sがわさん(当時40数歳)がデスクに近づいてくる。

そして彼は、ボクにこう声をかける。

「おい、GIN。今日はせっかくの土曜日だ。みんなで楽しく飲みに行くぞ。」



若林で見た空


当時・・・。

この誘いを断れる人々は、「新人類」と呼ばれた。

新人類。

会社集団における異分子。

「こいつら、何を考えてるのかさっぱりわからない。」大人たちをそう嘆かせた新人類が当時、急増していた。

でも・・・、残念なことにボクは「新人類」ではなかった。

「所長、いいですね。是非連れてって下さい。」

心優しいボクは、上司の誘いを上手に断れなかった。

だから、ついついウソの作り笑いをして、その誘いについて行った。

被害者は他にもいた。同期入社社員、同じ営業所に配属されたSずきクン、H田クン、M島クンの3人だ。

あと、女性社員のK村さんとA場さんも被害者になった。

ボクは、行くなら居酒屋がいいなぁって思ってた。

居酒屋に行って、営業所長Sがわさんを一気に酔わせて逃げて帰ればいい。そう思ってた。

でも、悲しいことに、Sがわさんはデスコが好きだった。

あ~、デスコ。今でも思い出す。

Sがわさんの踊り。それはとてもとてもひどいものだった。

両手の平を下に向けて、上下に動かしながら足をバタバタさせる。

リズム無視。それを延々と繰り返す。

しかも、それがイヤで若者たちは、テーブルでお酒を飲んでいるのに、彼は・・・。

わざわざ手招きして、一緒に踊ろうというのだ。

悲しかった。

日本が沈没して、富士山だけが残って。

全国民が富士山に避難をはじめたら、今度は富士山が突然噴火を始めて、全国民が右往左往しちゃう位、ボクらはデスコで悲しい思いを繰り返した。

あれから時が過ぎ。

いつの間にか、ボクは営業所長Sがわさんの年齢を追い越してしまった。


ボクは今の職場で若者を、デスコに誘わないことにしている。

デスコに誘って一人ホールで踊り、若者においでおいでなんか絶対しないようにしている。

まさに反面教師。

Sがわさんは、あの頃のボクら若者に、偉大なる教訓を残してくれたのだ。