シーン1

彼女が部屋を出て行った時の話

BGM 栞のテーマ http://www.youtube.com/watch?v=Mg2VcLrr4Io


若林で見た空


喧嘩して彼女がこの部屋を飛び出したのが5分前。

こんな夜中にどこに行くつもりなのだろう。

終電はとっくに終わってるし。

夜中に過ごす場所なんかありゃしない。

それをわかって彼女はこの部屋を飛び出して行ったのか。

それとも、かーっとなって、見境なくして飛び出して行ったのか。

ボクにはわからない。

聞く気にもなれない。

そんな時。あなたならどうするだろう。

眠くなったから、ね~ちゃおうって寝てしまうのか。

それとも、夜の街を飛び出して彼女を探し続けるのか。


雨が降り始めた。窓に雨粒が当たる音が聞こえる。

確か。

彼女は傘を持っていない。傘もささず、夜の街をとぼとぼと一人歩いているのだろうか。

そう考えると、心配で心配で居ても立ってもいられなくなる。

ボクは部屋をでた。そして街中を走り回って、彼女を探す。

でも、見つからない。

明け方。切れ掛かった雲の隙間からお日様の光が温かく地球を照らす頃。

下宿に戻ると、ドアの前に彼女が座り込んでいた。

「いったいどこをふらついていたんだ。」

聞くと彼女は、一言だけこう言った。

「GINちゃん。おはよう・・・。」

「昨日はごめんね。」

どちらからともなくそんな言葉がこぼれる。

そしてボクらは一緒に朝ご飯を食べると、何事もなかったように大学に向かった・・・。