初めて車を買った頃。

世の中の車の多くは、マニュアルシフトだった。

5速マニュアル。

スピードを上げる度にシフトアップ。

右折するときは、「ウインカーを右に出し、クラッチを踏みシフトダウンし、曲がり切る直前からアクセルを踏み込み、クラッチを繋ぎながらシフトアップを行う。」という楽しい作業を毎日味わっていた。


若林で見た空


そう言えば。

昔、ある雑誌で読んだことがある。

ドライブに出かけ、運転席の彼氏が上手にマニュアルシフトをカチャカチャ操作する姿に女性はウットリするという意見。

ボクはその意見を見逃さなかった。

だから、マニュアルシフトを動かす動作も、エレガントにやりたい。そう考えた。

マニュアルシフトをエレガントに動かし、助手席に座る彼女の目の中にある星を瞬かせたい。

そう思った。

それからのボクは、来る日も来る日も。

シフトチェンジの練習をした。

左手の手のひらを上に向けシフトレバーを「人差し指・中指・薬指」で前に押し出して一速に入れる。

二速に引き戻す時は左手の甲を上に向け、シックに手前に引き戻す。

三速の時はまた左手の手のひらを上に向け、シフトレバーをクールに前に押し出す。

そんな一連の動作を練習した。

そうして、ボクのシフトチェンジは陶冶した。

それは王侯貴族の乗馬のように。

はたまたロックの言う、紳士録「タブララサ」のごとく完成した。

ところが今は。

オートシフトになってしまい、ボクのエレガントなシフトチェンジはできなくなった。

それが残念でならない。

次に車を買う時は。

オートマの利便性より、エレガントなマニュアルシフトをボクは選ぶかもしれない・・・・。