ボクが子どもの頃。
ローラやニーナは傷ついていた。
特に。
ローラについて言えば、傷だらけになっていた。
傷ついて、心を閉じて、ヒデキの前で震えてた。
そんなローラの心を逆なでするように、ヒデキは彼女の前で、やたらに大きな身振り手振りで踊りを踊った。
傷ついた人の心を癒すのだから、そっと語りかけてあげればよいのに。
「そんなな派手な動きで踊られても、私の心は癒えないわよ、もうっ。」
ローラはそう考えたに違いない。
いやむしろ。
彼女は不快感すら覚えていたかもしれない。
「ちょっとぉ~。目の前でチョロチョロ動かないでよ。目が回るじゃない。」
ローラはそう思ったかもしれない。
彼女のことを考えたら、気の毒でならないって思ってた。
けど。
最近テレビに出てくるローラはとても元気だ。
人差し指と親指で輪っかを作っては、ほっぺたに押し付けて。
笑ってる。
ローラ。もうキミの傷は癒えたのかい。
ジャマなヒデキはもう、いなくなっちゃったのかい。
傷だらけのローラは、ボクが中学生の頃に流行った。