こたつほど、心温まる電化製品は少ない。

見て欲しい。あのまろやかで優しく、慈愛に充ちたお姿を。

四本足で立っていても、それは獣ではない。御仏のお姿だ。

こたつ。

それを人は、「おこた」とも呼ぶ。

「おこた?」「う~ん、怒ってないよ。」なんて会話を想起させる。

実に優しくてあたたかな電化製品だ。


若林で見た空


ところが。

この慈愛に充ちた電化製品。

その中では目には見えない、厳しい闘いが繰り広げられていた。

「こたつの中で誰が足を伸ばすのか。」

それは、人類が地球に誕生してからずっと今まで、解決の糸口すら見いだせない問題だ。

ちっちゃな頃。ボクは、姉とどちらが足を伸ばすかで、壮絶な闘いを繰り広げた。

ボクがせっかく広げた領土。ところが、その上に姉が足を乗っけてくる。

他国の主権を侵す行為は、内政不干渉の原則に反する。

ボクは断固抗議をして、足をバタバタさせた。

かのアレクサンダー大王は、東方を次々と制覇し、インドに足を踏み入れたとき、その地の長老にこう言われたそうだ。

「あなたがいかに領土を広げても、あなたが踏みしめられる土地は、あなたの足の裏の面積にしか過ぎないのです」と。


「おのれ、アレキサンダーめっ!!」

ボクら正しい民が足をジタバタさせるその上で、アレキサンダーも足をジタバタさせた。

そのせめぎあいはいつでも、母親の雷が落ちるまで続けられた・・・。