ボクの下宿は、裸電球だった。

東京に初めて出てきて。

下宿先を決め、天井を眺めると、裸電球がふら下がってた。

裸電球の光は、蛍光灯とは違い薄暗かった。

薄暗く、もの悲しいその光は、たとえ四畳半の狭い下宿でも、部屋全体を煌々と照らすという感じではなかった。


若林で見た空


自分の下宿が裸電球だと知ったその瞬間。

ボクは、とってもテンションが上がった。

「これは、かぐや姫の世界だ。神田川や赤ちょうちんの生活が、今日から始まるぞ。」

高校生の頃は、「俺たちの旅」や「俺たちの朝」を見ていた。

貧乏でも、明るくたくましく生きていく若者を描くそれらドラマに憧れていた。

ようし、今日からボクも中村雅俊だ。

そうだ。ボクはカースケだ。

「この裸電球の下で、オメダやグズロクと、一緒に酒を飲もう。」

そんな妄想を抱き、ボクのテンションはMAXに跳ね上がった。

大学生活の中で。

ボクは、たくさんのオメダやグズロクと出会った。

軽音楽をやってたから、そこから仲間がグングンと広がっていった。

そして、下宿の暗い暗い裸電球の下で、ボクらはみんなで集まってお酒を飲んだ。

飲むと、ギターを弾いた。ギターを弾いて、歌を歌った。

「下駄をならしてやつが来る~」。

夜中に大きな声で歌を歌うから、大家さんからお叱りの声が上がった。

それが、ボクにとって。

裸電球とのあたたかい思い出だ。