「あれ?Nか村はどうした?」
顧問のY村先生が気づいたのは、もはや夕方だった。
漫研部員は皆、その日一日を何も食べないで過ごしていた。
「う~む、お腹すいた。」皆が口々にそう呟く夕時。
Y村先生の声が、皆の空っぽのお腹に響き渡った。
「Nか村はどうした~。」
彼の叫びに冷静に対応したのは、不思議少女Kさんだった。
「あのぉ。Nか村クンは、お昼のカレーパンを買いに行ってます。」
「なぁんだ。そうか。」
Y村先生は、洒々落々とした人だった。
でも、さすがに不思議少女Kさんのこの言葉に安心したわけではなかった。
「まてよ。お昼を買いに行ったNか村が、夕方まで帰って来ない。」
その時、Y村先生の頭の中はDVDのように高速回転をしていた。
「お昼を買いに行ったNか村が、夕方まで・・・。」
「GIN、すぐにパン屋に行け~っ!!」Y村先生の声が、高校の敷地全土に響き渡った。
ボクは学校前のパン屋さんに、自転車をこいで向かった。
学校から自転車で1分。あっという間に辿り着いたパン屋さん。
そこにNか村クンはいなかった。
Nか村。
「お前はいったい、どこのパン屋さんに行ったのだ。」
心の中が真っ暗になった。
Nか村クンは間違えて、隣の村のパン屋さんにまでパンを買いに行ってしまったのかもしれない。
そしてその途中、山賊に襲われ、カレーパンとアンドーナツを強奪されたのかもしれない。
立ち尽くすGIN。
「ボクの、パン・・・。」
その目の前のショーウインドウには、カレーパンとアンドーナツが並んでた。
「あれっ。なぁんだ。カレーパンとアンドーナツ。売ってるじゃないか。」
でもまてよ、こんな時に。
こんな時にカレーパンとアンドーナツを買って食べてもいいのだろうか。
随分迷った。
友だちを選ぶか。
カレーパンマンを選ぶのか。
迷った挙句、ボクは取りあえず、カレーパンマンを買って食べることにした。
Nか村クン。
ごめんね。ボクはキミを探しに来たはずなのに、とりあえずカレーパンマンを買って食べてしまったよ。カレーパンをもぐもぐ食べながら、ボクは心の奥底で叫んでいた。
「Nか村クン。キミはまだ、生きているのかい?」