高校1年生の文化祭。

漫画研究同好会に所属していたボクとNか村クンは、自分たちで描いた漫画冊子「ひま」の販売に朝からずっと追われていた。

思った以上に「ひま」が売れる。

それは、嬉しい悲鳴だった。

けど、「それなら原稿があるから職員室の印刷機で増刷しよう」と顧問のY村先生が出した提案は、ボクらの多忙さに一層の拍車をかけた。

「先生、目が回ります。」

Nか村クンはY村先生にそう訴えた。でも、その言葉はY村先生の心にまで届かなかった。Y村先生もてんてこまいだったのだ。


若林で見た空


昼時が近づいて、ボクらはお昼にパンを買って食べることにした。

「誰が、買出しに行く?」みんな疲れきっていたから、手を上げなかった。

だから、買出し当番はジャンケンで決めることにした。負けたのはNか村クンだった。

Nか村クンは、みんなからお金を預かり、頼まれたパンをメモ書きし、それをポケットに突っ込んだ。

そして彼は自転車に乗って出かけた。「行ってらっしゃ~い。」

ボクとNか村クン以外のもう一人。

1年生の部員だった不思議少女Kさんがその後、おかしなことを言い出した。

「ねぇねぇ、GINクン。さっき確かNか村クン、目が回るって言ってたよ」。

「忙しかったからじゃないの?」ボクは彼の言葉を、あまり気に留めていなかった。

「ねぇねぇそれより、頭の上に輪を作ってな~んちゃってとつぶやくおじさんのこと知ってる?」

「えっ?何それ何それ?」

「その人電車の中にいるみたいだよ。もしかしたら、静岡鉄道の電車の中にもいるかもしれないね。」

「へぇーっ」

「あと、口が裂けてるおばさんもいるみたいだよ。」

「え~っ?何それ。どんなおばさん?股が裂けてるんじゃなくて、口が裂けてるの?すっご~い。見てみたい。」

「それと、顔がクチャってなるおじさんもいるよ。」

「それ知ってる、知ってるぅ。くしゃおじさんでしょ。くさオジサンじゃなくてよかったね。くさいオジサンは、股が裂けてるおじさんくらい困るものね。」

な~んて有意義な会話をしているうちに、ボクらは「目がクルクル回るNか村クン」のことをすっかり忘れてしまった。

そしてその日。Nか村クンは、パン屋さんに行ったきり、夜になっても帰って来なかった。

というところで、気が付いたら文章が長くなってしまったので、Nか村クンが倒れたところは、また明日のブログで詳しく書くことにするね。

それではまた明日。

以上。現場から実況はGINでした。